理事長 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院腫瘍外科学分野)
![]()
新年度に入り,ご挨拶申し上げます.
本学会の理事長となり,早くも2年が過ぎようとしています.この間,本学会をさらに発展させ,会員の先生方が診療・研究に集中できる環境を目指して,本学会全体を見渡し,また,社会の要望,社会情勢の変化などを考慮して,新規事業の立ち上げや事業・制度の改革を行ってまいりました.
まず第1に,一般社団法人National Clinical Database(NCD)の設立です.この事業の立ち上げの基礎となったのが,2007年と2008年に多くの会員の方々のご協力を得て行いました消化器外科手術のアンケート調査です.認定施設や関連施設において消化器外科専門医修練カリキュラムである115術式がどの程度行われているのか,また,手術成績における消化器外科専門医の関与の意義を主要な14術式において調査しました.2年度の合計で77万例の消化器外科手術が報告されました.その結果,(1)施設の種類により扱う疾患が異なる,(2)施設の種類・年間手術症例数により手術死亡率が異なる,(3)専門医の関与により手術死亡率や合併症率が異なる,ことが明らかになりました.これを受けて,日本全国で行われている消化器外科手術を症例・手術単位で登録し,リスク補正した手術成績(risk-adjusted outcome)を分析することを計画しました.このような分析を行うことにより,(1)自己のデータを客観的に評価することにより各施設や各外科医の医療水準を向上させることができる,(2)客観的なデータから消化器外科専門医の意義を評価できる,(3)それにより医療環境や診療報酬などに関する提言ができる,などのことが期待できます.併せて,(4)専門医/指導医の申請や更新に利用できる,(5)会員管理システムとの連携により効率化・費用削減が図れる,などの利点もあります.折しも同時期に,日本外科学会も外科手術のデータベース作成を考えていたことから,すでに先行してデータベースを運用していた日本心臓血管外科学会とともに,他の外科系学会を巻き込んでNCDを設立するに至りました.2011年1月1日の手術から登録開始を予定しています.このデータベースが会員の皆様の直接の利益となるのは4~5年後になるかと思いますが,日本全体の消化器外科領域の発展や将来を見据えて,手術症例の登録にご協力いただきたいと思います.
第2は学術集会(総会)業務の見直しです.総会の財務関係はすでに学会全体の財務に組み込まれていますが,総会の運営業務は総会会長の事務局で行われており,その負担は多大なものでした.また,毎年同様の事務作業が行われていますが,ノウハウの蓄積が行われない,などの欠点があります.そこで,総会当日の運営はPCO(学術集会運営会社)に委託し,それ以外は日本消化器外科学会事務局が総会会長の事務局と共同して業務に当たることにしました.2011年の総会からこの方式が取られます.これにより,総会事務局の人的・時間的負担の軽減が図られ,費用も削減できます.
第3は,各種事業のオンライン化です.入会手続き,学術集会の演題登録,論文投稿,学会誌,市民公開講座,などをオンライン化し,会員の皆様や市民の方々の利便性の向上に努めてきました.さらに,今年度の学術集会から抄録集はオンライン配信とし,必要なところだけを印刷してマイ抄録集を作成できるようにしました.2011年からは学会誌のペーパーレス化を行い,学会誌発行の迅速化,利便性の向上を図ります.また,これまで年に2回2,000人以上の会員が一堂に会して行っていた教育集会も,2011年からはeラーニング化して受講者の時間的・金銭的負担を軽減し,一方で,受講機会(講義時間は10分単位で,年中いつでも受講できる)の増加を図ります.
今後は,会員数の増加,手術技術認定,市民向け情報公開の促進,などに力を入れてゆきます.引き続き,会員の皆様の本学会へのご協力をよろしくお願いいたします.
