日本消化器外科学会

MyWeb 会員専用ページ ログイン
  • English
ホーム  >  学会概要  >  定款施行細則・諸規則  >  消化器外科専門医修練カリキュラム

定款施行細則・諸規則

一般社団法人日本消化器外科学会消化器外科専門医修練カリキュラム

 医学教育,医療制度は一層の変革がもたらされ,その中で医師の診療領域分担(機能分担)ならびにそれに伴う認定医・専門医制度の認定基準の統一化の作業が図られてきた.
そして現在,日本専門医制評価・認定機構を中心に「一医師一専門領域(国が定める基本的診療領域)」を原則とし,どの専門領域とも統一化された「認定基準」により認定が行なわれるように制度の整備の動きが活発化してきている.
外科関連については「初期臨床研修」から「総合的外科専門医修練」そして「サブスペシャルティ専門医」への連続的・段階的研修制度が構築され,日本外科学会では基本的診療領域としての「外科専門医」の制度が確定した.
そこで日本消化器外科学会としては,引き続く「外科関連サブスペシャルティ専門医」としての「消化器外科専門医」に至る消化器外科専門医修練カリキュラムを策定した.
その後,専門医制度の外形基準が設定され,「消化器外科専門医」も広告可能な専門医として認定されている.また,がん医療水準均てん化の取り組みも始まり,専門医の質の担保については一層の精緻化が求められているところである.そこで,消化器がんの診療に関する部分を現状に即して充実させ,ここに新たな「消化器外科専門医修練カリキュラム」を提示する.

基本的事項

  1. 専門医申請資格は外科専門医であることを必須とする.
  2. 呼称は「消化器外科専門医」とする.
  3. 修練内容について
    1)「消化器外科臨床に携わる外科医」の養成を目的とする.
    2)外科専門医のカリキュラム内容に加え,消化器外科領域の全般的,専門的な研修が求められる.
    3)修練に当たっては施設や個人格差をできるだけ少なくするような運用が必要である.
    4)経験必須内容および経験手技等の到達目標数を明確にする.
    5)消化器がんの診療に関して学習到達目標を設定する.
  4. 修練期間について
    申請資格はとして臨床研修修了後,最低5年の修練が必須であるが,修練カリキュラム内容の到達目標を重視し「卒後年限」は規定しない.
  5. 修練施設について
    修練は本学会が認定した指定修練施設にて行なわなければならない.施設認定に関する施行細則に従う.
  6. 修練の評価について
    1)診療実績:到達目標に規定する手術記録の確認審査を行う.
    2)業績:資格認定委員会の定める学術集会における研究発表,学術雑誌への論文発表による業績審査を行う.
    3)筆記試験:試験内容はカリキュラムにおける到達目標1~6を考慮し,かつ他のサブスペシャルティ領域の専門医認定試験の難易度との整合性を図る.
    4)受験資格:受験申請時に本学会会員であり,学会の認定する修練施設で一定期間の修練を修了した者とするが,会員歴は3年とする.
    5)試験,試問の基準,方法などについては評価法検討委員会にて定める.

消化器外科専門医修練カリキュラム

1.一般目標

 日本外科学会の外科専門医としての医療技術,知識を基礎にし,更に専門職としての消化器外科診療を実践できる専門医を養成するため到達目標を定め,研修を実施する.研修期間は,臨床研修修了後,最低5年を必須とする.

  1. 消化器外科領域全体を包括した専門医としての知識,臨床的判断能力,問題解決能力を修得する.
  2. 手術については通常の消化器系手術を適切に遂行できる技術を修得する.
  3. 消化器がんの診療に求められる基盤的知識,診断および進行病期の決定能力,外科治療の選択および遂行能力,集学的治療の知識およびその選択能力などを修得する.
  4. 医学,医療の進歩に合わせた生涯学習を行う方略,方法の基本を修得する.
  5. 自らの研修とともに上記項目について後進の指導を行う能力を修得する.

2.到達目標

1.到達目標1(基礎的知識):
消化器外科診療に必要な下記の基礎的知識を習熟し,臨床に即した対応ができる.

  1. 輸液と輸血
    1)臓器,疾患,術式などの特異性に合わせた水,電解質,酸塩基平衡を考慮し,周術期の補正輸液,維持輸液,輸血を行うことができる.
    2)心不全,呼吸不全,腎不全,ショック,糖尿病など併発症,合併症を持つ症例に対し,疾患別,病態別の輸液計画を立て,実施することができる.
  2. 栄養と代謝
    1)患者の病態や疾患に応じた必要熱量を計算し,適切な経腸,経静脈栄養剤の投与,管理ができる.
    2)栄養管理に必要な手技,処置および合併症に対する処置ができる.
  3. 外科的感染症
    1)臓器や疾病特有の細菌の知識を持ち,抗菌剤を適切に選択,投与することができる.
    2)AIDS,肝炎,その他感染症を併発した患者に対する外科処置についての知識を持ち,対処について述べることができる.
    3)重症感染症に対する病態の把握に基づいた対応ができる.
  4. 創傷管理
    基礎疾患,病態などの特異性を考慮に入れ,創傷治癒の特色を理解したうえでの対応ができる.
  5. 血液凝固と線溶現象
    1)基礎疾患の特色,病態の理解に基づき,出血傾向に対する処置,管理ができる.
    2)血栓症の予防,診断および治療の方法について理解を持ち,的確に対応できる.
  6. 周術期の管理
    1)疾患の特性,術前合併症,術式特性,手術侵襲などの病態を把握し,検査計画,治療計画を立て,指示することができる.
    2)併存疾患に対する対応ができる.
  7. 臨床免疫学
    1)疾患の特異性,治療に伴う合併症などにおける免疫学的病態について述べることができる.
    2)移植に伴う組織適合と拒絶反応について述べることができる.
  8. 腫瘍学一般
    1)消化器がん各種の診断と進行病期について十分な知識を有し,適切に診断し,かつ進行病期を決定することができる.
    2)消化器がんの病態の特性,その進行病期に合わせた手術,化学療法,放射線療法,免疫療法などの適応を述べることができる.
    3)各種消化器がんの取扱い規約,診療ガイドラインを理解し,診療に役立てることができる.
    4)がんの生物学の基本を述べることができる.
    5)がんの発生,疫学,スクリーニング,発がん予防の基礎知識を述べることができる.
    6)臨床試験のデザインと遂行,これに必要な統計手法について述べることができる.
  9. 放射線治療
    1)放射線生物学の原理と,放射線治療の根治的および緩和的医療としての適応について基礎的知識を述べることができる.
    2)治療計画と線量計測の原理を理解し,放射線療法と手術ないしは抗がん剤治療,あるいはその両者との併用療法について述べることができる.
    3)放射線療法による急性,遅発性の障害について対応できる.
  10. 化学療法
    1)初発,再発の悪性疾患において有効な抗がん剤治療の適応と目標について述べることができる.
    2)抗がん剤の術前投与法,同時併用,術後補助治療の有用性および抗がん剤の放射線増感剤としての適応について述べることができる.
    3)特定の抗がん剤については投与量変更と治療の延期について対応できる.
    4)個々の患者に対する抗がん剤治療の危険性と利点を比較するため,患者の合併症や臓器機能異常について評価し対応できる.
    5)さまざまな薬剤に関する体内動態および薬理ゲノム学・薬理学的知識を述べることができる.
    6)長期障害を含む各抗がん剤の毒性プロファイル,臓器機能不全を有する個々の患者に対する投与量の設定,投与スケジュールの調整,更に合併症について対応できる.
  11. 緩和ケアと終末期ケア
    1)疼痛部位と強さを適切に把握し,世界保健機関(WHO)の疼痛ラダーの実用的知識を持ち,オピオイド麻薬や他の鎮痛薬の薬理と毒性について述べることができる.
    2)可能な方法でがん性疼痛を管理し,緩和のため侵襲的医療が必要となった場合,紹介する時期を(適切に)判断できる.
    3)がんの精神社会的影響について理解し,疾患のすべての病期において介入すべき利用可能な手段を実践できる.
    4)患者とその家族と意思疎通を図り,困難な状況において悪い知らせを開示すること,的確に行動することを実践できる.
    5)他のチーム内の他のプロフェッショナル・ヘルス・ケア担当者と意思疎通を図り,共同して患者ケアを実践できる.
  12. 外科病理学
    切除標本の肉眼およびルーペ像の観察により術前画像診断,開腹所見との対比検討ができる.

2.到達目標2(診療技術):
消化器外科診療に必要な知識,検査・処置の手技に習熟し,それらの臨床応用ができる.

  1. 下記の検査手技ができる.
    1)超音波診断,上・下部消化管造影,上・下部内視鏡検査,PTCなどの検査を自身で実施し,診断できる.
    2)エックス線単純CT,MRI,血管造影,術中胆道鏡,ERCPの適応を決定し,読影することができる.
    3)上記画像診断の個々の検査法の特性を理解し,検査計画を作り,総合診断ができる.
    4)食道内圧検査,食道24時間pHモニター検査などの消化管機能検査の適応を決定し,結果を解釈できる.
  2. 検査,処置,手術の意義,適応を理解し,個々の症例の病態に合わせ適切な検査,治療計画を立て,遂行することができる.
  3. 消化器系救急の対応,診断・治療:すべての消化器領域の救急に対するプライマリーケアができ,緊急手術の適応を判断し,それに対応することができる.

3.到達目標3(手術技術):
一定レベルの手術の意義,適応を理解し,適切に実施できる能力を修得し,臨床応用できる.

行動目標

 消化器外科に包含される各種主要手術を漏れなく経験する.術者としての規定例数を含む450例以上の経験を必要とする.

  1. 手術難易度,到達度別必須症例数
    次の3カテゴリーの手術数を必須とする.
    カテゴリー1:(低難度手術については到達度1)として50例(術者)
    カテゴリー2:(中難度手術については到達度2)として50例(術者)
    カテゴリー3:(高難度手術については到達度3)として50例(助手も可)

    難易度   到達度   経験例数  
    低難度手術   1   50例 (術者)
    中難度手術   1,2   50例 (術者)
    高難度手術   1~3   50例 (助手も可)

  2. 必須主要手術および症例数(※手術記録2の作成も必要)

    以下の手術は必ず経験例数に含まれなくてはならない.

    手術名 経験例数  
    食道癌の手術 3例  
    幽門側胃切除術 10例 (術者5例以上を含む)
    胃全摘術 5例 (術者2例以上を含む)
    結腸癌の手術 10例 (術者5例以上を含む)
    直腸癌の手術 5例 (術者2例以上を含む)
    腸閉塞の手術 3例 (術者1例以上を含む)
    肝部分切除術 3例 (術者1例以上を含む)
    肝2区域以上の手術 2例  
    膵頭十二指腸切除術 3例  

    (付)
    手術到達度は下記のように規定する.
    到達度1:すべての手術を術者として適切に遂行できる.
    到達度2:指導者の指導のもと,術者として手術を適切に遂行できる.
    到達度3:指導者の助手として手術を適切に遂行できる.

    新手術難易度区分(2009年以降の審査申請から適用)

4.到達目標4(医の倫理):
医の倫理に配慮し,総合的な外科の診療を行う適切な態度,習慣を身に付ける.

行動目標

  1. 指導医のもと担当医として症例を受け持ち,消化器外科診療における適切なインフォームド・コンセントを得る訓練を行う.
  2. 術後の療養,生活などの指導を適切に行う.
  3. 後進の医師に対して実地医療に関わる種々の事項について指導を行う.
  4. 文献や指導医の意見などの教育資源を活用する方法を学ぶ.

5.到達目標5(生涯学習):
消化器病学,消化器外科診療の進歩に合わせた生涯学習を行う方略,方法の基本を習得する.

行動目標

  1. 施設内カンファレンスを司会し,積極的に討論に参加する.
  2. 個々の症例に合わせ,EBMに基づいた診療を行う.
  3. 学術集会,教育集会に参加し,日進月歩の医学,医療の実情に触れる.
  4. 学術集会,学術出版物に,症例報告や臨床研究の結果を発表する.

6.到達目標6(医療行政):
医療行政,病院管理(リスクマネージメント,医療経営,チーム医療など)についての重要性を理解し,実地医療現場で実行する能力を修得する.

備考
昭和59年7月 施行
平成13年1月 全面改正
平成19年1月 手術難易度区分一部改正
平成20年12月 消化器がんの診療に関する事項追加
平成27年12月 口頭試問に関する事項削除
平成28年6月 新手術難易度区分一部改正