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Last Update:2011年12月5日

ご報告

消化器外科医の労働環境について―アンケート解析―

第65回日本消化器外科学会総会
特別企画 消化器外科医の勤務環境と問題点

消化器外科医の労働環境について
―アンケート解析―

 

日本消化器外科学会医療安全委員会

川崎 誠治,石黒 めぐみ,窪田 敬一,近森 文夫,辻仲 利政,長尾 二郎,中川 國利,野村 幸世,葉梨 智子,馬場 秀夫,本田 宏,松股 孝

 

はじめに

 消化器外科医の労働環境や医療環境については国民に十分に理解されていないのが現状である.これを鑑み平成18年7月に日本消化器外科学会(北野正剛理事長,当時)は医療環境検討委員会を設置した.さらに市中病院や大学病院に勤務している臨床医が主体である会員の労働環境の実態を把握することを目的として,第一回のアンケート調査を行った.この結果は第62回日本消化器外科学会総会で報告され,報告書は日本消化器外科学会雑誌(Vol. 40, No. 12, 2007)に掲載された.平成22年2月に第二回のアンケート調査を行い,その結果は平成22年7月の第65回消化器外科学会総会(岡正朗会長)において,川崎が会員の代表として報告した.これはその報告書である.

 

調査の概要

1.調査対象

 年齢層および性別を考慮し,会員総数21,147名の20.3%である4,295名を抽出した.

2.調査方法

 郵送による無記名の調査とした.

3.回収状況

 回答者数は551名であり,回答率は12.8%であった.

 

結果

1.回答者の背景

 回答者中の女性の割合は16.5%であり,全会員中の女性会員の割合の4.2%よりも高率であるが(スライド1)これは女性医師の労働環境を把握するために女性は無条件に抽出したためである.回答者の年代層は,20歳代12.0%,30歳代22.0%,40歳代27.3%,50歳代28.9%,60歳代10.1%であった(スライド2).ちなみに29歳以下の会員の割合は4.2%である.

 勤務先の開設主体は,学校法人(大学病院)が18.1%,国公立もしくは公的施設が53.6%であり,私的施設は24.3%,その他が4.0%であった.また勤務先の病床数は500床以上が43.4%,300-499床が23.7%,100-299床が21.4%,100床未満の施設は11.5%であった(スライド3).

 勤務形態は,医療法人役員,大学教授など経営責任のある勤務医が22.3%,経営責任のない勤務医が48.1%,大学医局から派遣された勤務医が22.3%,研修医が3.7%,経営者(開業医)が3.5%であった(スライド4).非開業医に対して将来開業を考えているか,の質問に対しては,「開業しない」が50.5%と半数であり,「開業する」と答えた4.5%を大きく上まわった.回答者の背景に関しての,これらの因子に関する分布は前回調査時とほぼ同様であった.

 

2.他業務の診療

 日本の消化器外科医の多くが,本来の専門である手術および周術期の管理以外にも,それぞれの専門医の不足のために消化器外科に関連した他の業務にも従事しているのが実情である.これらの実態を明らかにするために,「癌患者に対する化学療法,緩和ケア,救急医療,麻酔の業務への従事」の有無について質問した.それぞれの業務への従事について「あり」と答えた回答の割合は,化学療法が83.5%,緩和ケアが80.5%,救急医療が82.7%,麻酔が74.3%であった.従事している理由としては,化学療法については「自分が専門であるから」と答えた回答が42%であったが,他の3領域ではいずれも,「専門医不足のため」と答えた割合が60-90%になった.さらに「これらの診療を担当したいか否か」の質問をした.いずれの業務についても「担当したくない」との回答が過半数を占めていたが,特に麻酔については,92%が「担当したくない」の回答であった(スライド5−8).消化器外科医を含めた外科医の不足が叫ばれているが,人的資源枯渇のかなりの部分が,消化器外科医が本来の専門以外の業務に従事させられていることに起因していると考えられた.化学療法,緩和ケア,救急医療,麻酔などの専門医の充足が望まれる実態であり,あるいは今後は専門医の認定と配分について,制度上のより強い選択が必要なのかもしれない.

 

3.報酬

 この結果の解釈については,調査対象が無作為抽出ではなく,その結果10歳ごとに区切った回答者群の中央値が50歳代の群であり,また30歳未満の回答者の割合が12.0%%であることに留意する必要がある.主たる勤務先以外からの収入があると回答したものが59%であった.これらを含めた年間の税込み総収入は1,300-1,500万円の層が一番多く19%を占めた.なお2,000万円以上が10%であり,1,000万円未満の割合は20%であった(スライド9).

 

4.勤務時間

 所属施設での勤務時間を対象としたアンケートを施行した.法定時間内である週40時間以内の勤務にとどまるとした回答は5%に過ぎなかった.週60時間以上の長時間労働は,「過労死がいつ来ても不思議でないとされる勤務時間」と定義されるが,これに該当する回答は69%であり前回とほぼ同じ数字であった.さらに週80時間以上の勤務と答えたものが30%にのぼった(スライド10).勤務時間から判断する限りにおいては,安全な医療を提供できる医療環境からは大きくかけ離れていると結論せざるを得ない数字である.年代別に勤務時間を検討すると20歳代では週60時間以上が83%,80時間以上が45%を占めていた(スライド11).また30歳代ではこれらの数字は88%および42%であり(スライド12)若年層ほど勤務時間が長い傾向が伺える.

 アルバイト等所属施設以外の勤務を行っていると答えた会員の割合は,46%であったが,そのうち約4割が週に10時間以上他施設での勤務に従事していた(スライド13).

 総じて5年前と比べて勤務時間が「増えた」と感じている会員は40%であり,「減った」と感じている会員の22%のほぼ倍の回答であった(スライド14).また勤務時間が増えた理由として(複数回答可とした)「書類を書く時間が増えた」が67%,「会議その他が増えた」が54%であり,一方で「患者数および診療時間が増えた」とする回答は63%であった.なお「IT化」との回答が24%であった(スライド15).インフォームドコンセント,病院機能評価等,時代の推移ともに,本来の診療行為以外の業務にさかれる時間が増大しつつある事を示した数字と考えられる.一方「消化器外科医の負担を減らすには?」(複数回答可)の問いに対しては,上記の数字を反映してか,「医師以外の職員に業務を移行する」が90%,「IT化など組織の効率化を図る」が38%であり,「医師を増やす」と答えたものが44%であった(スライド16).現在叫ばれている医師不足あるいは医師の過重労働の問題に対して,臨床の現場で働く医師からは,単純に医師の数を増やす以前に,他にすべき解決法が多々あると感じている実態を反映した結果と考えられる.

 

5.当直

 今回のアンケートでは29.1%の回答者が当直をしていなかったが,回答者の22.3%が経営責任のある勤務医であり,また50歳以上が38.7%という抽出結果を反映した結果であることは留意する必要がある.回答者中,月に3-4回の当直としたものが28.8%と一番多く,3回以上が全体の51.7%を占めた.労働基準法では宿直は週一回と定められており,これに違反する月5回以上の当直に従事する回答者の割合は22.9%におよんだ(スライド17).なお労働基準法では時間外労働の限度時間を,1週間15時間,1か月45時間,1年360時間と規定している.

 労働基準法の定めるところの当直の勤務内容は,定時的巡視や緊急の文書または電話の収受,非常事態の準備などに限定され,通常業務に近い診療活動は認められていない.この定義による勤務内容に合致した当直は7.0%にとどまり,3件以上の緊急患者診療を行っているものが75.4%に登った(スライド18).

 当直あけの勤務形態は「非番」が本来あるべき業務形態と考えられるが,これに該当するものは2%の回答者に過ぎず,「半日勤務」も7%にとどまった.一方91%の回答者が「手術を含む通常の業務」が当直の翌日の業務であるとしており,連続労働時間は32時間を超えている実態である(スライド19).

 

6.拘束と緊急呼び出し

 前項の当直に関する回答と同様に結果には抽出条件によるバイアスがかかっていることを考慮して解釈する必要がある.1か月あたりの当直および日直以外の拘束(オンコール)は,「なし」とする回答が33.1%であった.1か月に5-8回という回答が一番多く22.4%であったが,1か月に9回以上の拘束があるとする回答が27.2%を占め,2日に一回以上の拘束有りとする回答が16.2%を占めていた(スライド20).拘束に対する報酬は「ない」とする回答が46%であり,「呼ばれたときのみある」とするものが45%,本来あるべき形態である「拘束回数分ある」との回答は9%であった(スライド21).

 

7.労働時間に対する会員の評価

 現在の就業時間をどう感じるか,という質問を超過勤務時間,当直/呼び出し,アルバイト等全てを含めた就業時間を対象として行った.「少し過重である」とした回答が48.8%であり,「かなり過重である」としたものが29.2%であった(スライド22).これらの結果は前回調査結果とほぼ同様である.また過重労働によりどのような不安があるか(複数回答可)という問いに対しては,「自分自身の健康」と答えたものが81%と一番多く,順に「医療ミス」(68%),「家族との関係」(55%)と続き「不安がない」という回答は4%にとどまった(スライド23).

 

8.医療過誤と医事粉争

 医療過誤の誘因として医師の勤務状態との関連をどのように考えるか?(複数回答可)の問いに対する回答は,「過剰な業務のために慢性的に疲労している」が75%と最多であった.ついで「医療技術の高度化,医療情報の増加のために医師の負担が急増している」が68%,「患者が多く一人当たりの診療時間,密度が不足がちである」が63%と,上位3つの回答に関しては前回アンケートと同様の結果であった.また「医療事故防止システムが整備されておらず個人の努力に任されている」という回答が41%あった(スライド24).

 また,医事紛争への現状への対応について,診療への影響をどのように考えるか(複数回答可)という問いに対する回答は,「防御的,萎縮医療になりがちになる」とするものが79%と最多であり,「安全意識が高まる」と答えたものが24%だった結果と対比をなしている.一方「外科医を辞めたくなる」と答えたものが34%にのぼった(スライド25).

 実際の医事紛争の経験があると答えた会員は37%であり,実際に訴訟された会員も9%に達していた(スライド26).

 

9.出産・育児休暇等

 育児と仕事との両立は可能か?との問いに対する回答は「両立は困難だと思う」とするものが70.3%,「両立はできないと思う」の14.9%とあわせて大半を占めた(スライド27).これに対してさらに,育児と仕事の両立は困難あるいはできないとする理由は?(複数回答可),の問いをしたところ,83%の会員が「通常の勤務時間以外の労働が恒常的であり育児に支障をきたす」と答えており,現行の勤務環境下では育児をしながらの仕事の継続が困難であることを示している.また「体力的な問題または配偶者の仕事環境が女性の育児と仕事への両立に対応できない」とする回答が22%あり,これらの問題は,消化器外科医のみならず,全ての医師の勤務環境,さらには日本人全体の労働環境にも関わる問題であることを示唆している.一方「育児をしながらの仕事では外科医として自分の満足できる仕事が遂行できない」が25%,「子供の情操教育上仕事をしながらの育児は良くない」が22%の会員からの回答として寄せられた(スライド28).

 産休時の代替要員または診療について,あなたの職場の女性常勤医師が「妊娠3か月であることがわかったので6か月後に産休に入ります」と言ったとしたら?(複数回答可)の質問をした.「交替要員で完全にカバーされることはなく,診療レベルを維持するためには,残った医局員が仕事量を増やしてカバーするしかない」と答えたものが65%であり,「交替要員の確保は困難で,残った医局員の仕事量を増やしてしのぐしかないが,診療レベルの低下が予想される」が44%,「交替要員が確保されても非常勤あるいは日替わり要員となる可能性が高く,診療レベルの低下が危惧される」が21%であり,実際には産休に際して労働要員等の埋め合わせは困難であることが確認された.

 育児休暇について,法律上は男性・女性ともに育児休暇が保証されていると明記した上で,実際に育児休暇を取りたいかと思うか,と質問したところ(アンケート対象者男性会員83.5%),とりたいと答えた会員は46.8%に達した.さらに,「取りたくない」と答えた回答者にその理由(複数回答可)を尋ねたところ,「同僚,患者,勤務先に迷惑をかける」が80%と最多の回答で,他には「研究やキャリア形成に支障をきたす」が36%,「家庭の経済を破綻させる」が25%であった.

 長期間診療配置に就くことができなかった後の職場復帰は可能か?の問いに対しては,「可能」と答えたものは32.9%にとどまり,「少し難しい」の37.8%から「不可能」の2.4%まで含めた困難であるとするものが全体の2/3を占めた(スライド29).

 長期間診療配置に就くことができなかった後の職場復帰を容易にするために必要なものは?という問いを複数回答可として設けた.回答として一番多かったのが「短い時間でも働けるためのワークシェアリングシステム」の65%であり,「休暇を取った時の人員補充システム」の57%,「キャリアの維持・向上のための教育システム」が51%と続いた.この他「家族の理解」が45%,「病児保育」が32%との回答であった(スライド30).いずれも現行の各病院の勤務環境下では達成不可能な案件であると考えられ,これらへの対応には学会のみならず国全体のシステムの確立が必要と考えられる.

 

10.仕事の満足度

 仕事に対する満足度では「まあ満足」の49.3%まで含めると,満足とするものが55%であり,「少し不満である」および「かなり不満である」の22.9%を大きく上回った.これは前回調査とほぼ同じ結果である(スライド31).

 仕事への満足を感じる理由は?(複数回答可)の質問に対しては,「高度な医療を行うことができる」が53%であり,ついで「良き指導者,同僚がいる」が44%,「患者と喜びを分かち合える」が40%,「好きな研究を行うことができる」が19%,「収入が多い」が19%であった.なお「時間的にゆとりがある」と答えた回答が14%あった(スライド32).なお医師を志望した同期と現在の仕事を比較して初志が達成されているか?との質問に対しては,「達成している」の回答が50.7%であり「達成していない」の14.6%を上回った.

 一方で仕事に対する不満を感じる理由(複数回答可)を質問したところ,「多忙すぎる」が60%(前回調査29%),「患者の権利意識に不安を覚える」が31%(前回調査16%)と前回調査の結果と大きく異なり,消化器外科医を取りまく環境がここ数年で大きく変化していることを示している.この他の回答は「収入が少ない」が52%,「研究・研修の機会が少ない」が24%,「技能が発揮できない」が22%,「良き指導者・同僚がいない」が15%であった(スライド33).

 

11.消化器外科等の科を中心として昨今勤務医不足が叫ばれているが,勤務医不足の原因について複数回答可の質問をした.「過酷な労働環境」とした回答が55%,「新臨床研修医制度」にその原因があるとする回答が51%,「国民・マスコミの医療への過度な安全要求」と回答したものが46%であり,以下「女性医師の増加」が26%,「病院医療の高度化・細分化による相対的医師不足」が25%,「開業医との所得格差」が25%,「大学の医師引き上げ(医局制度)」が21%と続いた(スライド34).なお,日本の医師数は単位人口あたり世界(OECD加盟国)の平均と比較すると約3分の2,一人あたり医療費はOECD加盟30か国中19番目であると明記した上で,この事実に対する認識を問うたが,「知っていたと」の回答は48.4%であり,「知らなかった」(23.4%)および「一部知っていた」(28.2%)を下回る結果であった.

 

 今回のアンケート調査から読み取れる重要な部分を以下にまとめる.

  1. 日本の消化器外科医は慢性的に長時間労働に従事しており,この環境は改善傾向にない.特に当直の回数の多さ,当直の際の過酷な勤務,当直明けに休みがとれず通常勤務になること等が特徴としてあげられ,これらは単に勤務時間が長いだけではなく,労働という観点から問題である.
  2. 患者の権利意識の高まりを感じ,訴訟になる危惧に日常的にさらされている.
  3. それぞれの専門医が不足しているために,本来は専門医が担当することが望ましい麻酔,救急,化学療法,緩和ケア等の治療を担当することを余儀なくされている.
  4. 医師でなくてもできる仕事を担当するスタッフの充実を求める声が切実である.
  5. 女性医師の産休や病気療養の際にそれを補う勤務環境が不備である.

 

おわりに

 これらのアンケート結果を鑑み考えられる最低限の提言を以下にしたい.

  1. 当直明け勤務の軽減.
  2. 消化器外科医としての本来の専門の業務以外の麻酔,救急,化学療法,緩和ケアに,望んでいないにもかかわらず従事しないようにすること.
  3. コメデイカル(専門看護師,社会福祉士,医療事務補助員等)の育成と,医師からコメデイカルへの業務の移行.
  4. 院内保育所(病児保育を含む)の整備,ワークシェアリング制度の整備推進.

 これらの改善が見られない場合には,医学生,初期臨床研修医が,勤務環境のよい(楽な,訴訟されにくい)科を選択する傾向に拍車がかかり,消化器外科医の減少に歯止めがかからず,その結果労働環境がよりいっそう悪化するという悪循環に陥ることが予想される.この悪循環の帰結は,まさに診療レベルの低下と医療ミスの増加であり,これらの問題の解決は焦眉の急であると考えられる(スライド35).

 

付記:アンケートでは問いに対する選択式の回答以外に,回答者の会員の方に自由に個別の意見を書き込んでいただく覧を設けた.多数の意見が寄せられたがその中から,いくつか著者(川崎)の選択で抜粋したものを参考までに以下に掲載する.

個別意見

  • 「現在の新臨床研修医制度の廃止.厚生労働省の謝罪.医師は何か起こった場合に訴訟や責任が追求されるが,官僚や政治家は政策の間違いの責任追及がなされないのはおかしい.」
  • 「医師は個々に常に理想の医療を追求すべきであって,政治や経済に規制され,振り回されることは,本来あるべき姿ではないと考える.もっと高邁な理想を掲げて行動すべきである.医療を単なる労働として評価すること自体がナンセンスであり,医療が聖職であることを若い人達にもっと自覚してもらいたい.」
  • 「昨年まで大学病院に勤務しておりました.そのときにこのアンケートがあったなら,今回以上に過酷な勤務状況を記入していたと思います.現在は一般病院に勤務しており,忙しい中にもゆとりのある勤務ができています.医局から離れた理由は家庭内の事情でしたが,現在多くの若手外科医が過酷な勤務で退局する状況にあり,数年後の消化器外科を考えると憂うつです.落ち着いたら医局に復帰するつもりですが,火事で燃え盛る家の中に,人助けに飛び込むような複雑な気持ちもあります.」
  • 「これだけ過重労働が問題視されているのに,今更アンケートとは,周回遅れも甚だしいと思います.」
  • 「リスクの高い高度な医療や労働負荷の大きな医療を担う者がそうでない者と同等にしか評価されない現状を変えなければ,医師総数を増やしても意味がないと思います.」
  • 「外科医が手術を行い,化学療法も行い,ターミナルの患者をも看取る(特に大手術の前夜真夜中)では,外科医の負担が大き過ぎるように思います.」
  • 「医師不足でなく医師の分布異常が現在の状況を招いている.必要な部署に医師が不足し,医師のQOLのいい部署に若手医師が集まっている.」
  • 「すべての原因は教育の崩壊にあると思っています.日本人が変わってしまったのではないでしょうか.頭も悪くなったし,性格も悪くなったようです.」
  • 「二児の母ですが,二人目を出産するまでは,外科医として病院勤務していました.育児の時間はほとんどとれず,実家と保育園に頼り切りでした.夫も職場の同僚も理解があり,産休,育休を取得するのには問題なかったのですが,復帰後退職者が出て,勤務が忙しくなり,1年で体調を崩し入院しました.外科医を続けるのは困難と思い,現在は一般内科医として勤務しています.」
  • 「医療は一旦は崩壊して,市民やマスコミが現状が如何に恵まれていたものであったかを認識し,体制を変えない限り,どのような小手先の梃入れ策を使ってもうまくいかないと思う.」
  • 「現在は全国どこでもいつでも最高の医療を格安料金で受けられるのが当たり前,医療を受ければ良くなるのが当たり前,そして不幸な結果となれば,どこかに問題があったに違いないとなる.いつ犯罪者にされるかわからない職場に希望者が少なくなるのは必然の結果である.」
  • 「外科医を志す者は暇を求めていません.忙しくても良いので,外科医を正しく評価してほしいと思います.わずかな延命効果しかない抗がん剤より手術料の点数が低いことや,あるいは癌治療の本質は抗がん剤治療であるかのようなマスコミ報道を聞くのは非常に悲しい.」

 

(アンケート調査に協力していただいた会員の皆様に深く感謝いたします.また日本消化外科学会理事長,杉原健一先生および,第65回日本消化器外科学会総会会長,岡正朗先生に感謝を申し上げます.)

 

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