原著
噴門癌の食道進展に関する臨床的ならびに実験的研究 第2篇 食道胃接合部ならびにその付近における壁内リンパ路に関する実験的研究
川田 彰得
東京女子医科大学消化器病センター
噴門癌の食道への進展に対して食道胃接合部およびその付近の壁内リンパ流が影響しているものと考え,成犬を用いてモデル実験を行つた.その結果,正常では胃から食道へ上行する壁内リンパ流は認められないが,噴門部胃壁を全層にわたつて結紮し肛門側と側方とに対するリンパ流を遮断し,さらに結紮領域の漿膜を剥離し漿膜下リンパ流を阻害したものにおいて,粘膜下を食道へ上行するリンパ流が認められた.かかる病的状況は噴門部に癌腫が存在する際には起りうべきもので,臨床上の知見と合わせ考えれば,癌腫の漿膜下への浸潤が食道進展を助長する因子であり,その際粘膜下組織層を先進部として食道ヘ進展していくものと考えられる.
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