原著
胃癌の静脈侵襲について―病理組織学的検査法の検討―
稲田 潔, 下川 邦泰, 池田 庸子, 尾関 豊*, 種村 廣巳**
岐阜大学医学部臨床検査医学教室, 同 第1外科教室*, 同 第2外科教室**
臨床病理学的に種々の点で近似した2群の胃癌,A群235例,B群115例の切除胃について静脈侵襲を検索した.病理組織学的検査は,A群で平均1.7枚,B群で3.8枚の組織片について,ビクトリアブルー―ヘマトキシリン・エオジン染色,第VIII因子関連抗原およびラミニン染色を行い検索した.癌が粘膜層のみに限局している症例を除くと,静脈侵襲はA群48.3%,B群56.0%に認められ,癌の深達度,リンパ管侵襲およびリンパ節転移の程度に平行して増加し,これらとの間に正の相関が認められたが,組織型ではとくに有意差は認められなかった.ビクトリアブルー―ヘマトキシリン・エオジン染色は静脈の識別に,基底膜染色は小静脈の判別に有用であるが,細静脈とリンパ管の鑑別には内皮細胞染色が必要であった.また,検索は腫瘍中心部および末梢部より採取した組織片,少なくとも4個について行うのが適切と思われた.
索引用語
venous invasion in gastric cancer, Victoria blue-hematoxylin eosin stain, factor VIII related antigen stain, laminin stain
日消外会誌 23: 2014-2023, 1990
別刷請求先
稲田 潔 〒500 岐阜市司町40 岐阜大学医学部臨床検査医学
受理年月日
1990年4月11日
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