症例報告
広範な転移を伴った早期胃癌の1例
秋本 亮一, 溝渕 昇, 土谷 昇二, 古屋 平和, 山崎 忠光, 榊原 宣
順天堂大学第1外科
胃壁深達度が粘膜下層までと定義されている早期胃癌のなかにも,まれに広範囲な転移を伴う症例がある.最近,鼠径リンパ節にまで及ぶリンパ節転移と卵巣転移を伴った早期胃癌の症例を経験した.
症例は43歳の女性.右鼠径リンパ節の生検により印環細胞癌の診断となり,精査の結果胃前底部にIIc型の胃癌を認めた.胃切除術を施行したところ,胃の主病巣は粘膜下層にとどまっていたが,リンパ節転移は既に大動脈周囲にまで拡がっていた.胃切除術後5か月で卵巣転移で再手術を受け,さらにその6か月後に癌性胸腹膜炎で死亡した.
早期胃癌で第4群リンパ節にまで転移があった症例は,本邦では自験例を含めて12例が報告されている.また早期胃癌で卵巣に転移を認めた症例は自験例を含め6例であった.これらを若干の文献的考察と合わせて報告する.
索引用語
distant lymph node metastasis of early gastric cancer, ovarian metastasis of early gastric cancer
別刷請求先
秋本 亮一 〒410-22 静岡県田方郡伊豆長岡町長岡1129 順天堂伊豆長岡病院外科
受理年月日
1990年9月12日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|