症例報告
非機能性膵島腫瘍の2例
土井 正樹, 榊原 次夫, 加藤 誠, 萩原 明郎, 山根 哲郎, 高橋 俊雄, 伏木 信次*
京都府立医科大学第1外科, 同第2病理*
比較的まれな非機能性膵島腫瘍を当科で2例続けて経験した.症例1は41歳女性で,他医から多発性膵腫瘍として紹介された.膵体部を含めた膵頭十二指腸切除術により摘出した切除標本では膵頭部から体部にかけて3個発生しており,組織学的に悪性膵島腫瘍と診断された.症例2は24歳女性で,左上腹部腫瘤の精査のため入院となった.腫瘍は膵尾部に発生した表在突出型であり,腫瘍のみを摘出した.組織学的には膵島腫瘍と診断されたが良悪性の鑑別は不明であった.症例1,2ともホルモン過剰産生に伴う症例はなく,術前の空腹時の各血清ホルモン値も正常値であることから非機能性膵島腫瘍と考えられた.
膵島腫瘍は一般に組織学的に悪性であっても発育速度が遅く予後が比較的よいといわれている.今回経験した2症例も切除により術後1年6か月を経過した現在も再発は認めていない.膵島腫瘍は多発性であっても積極的に切除する意義はあると思われた.
索引用語
nonfunctioning islet cell tumor, multiple islet cell tumor
別刷請求先
土井 正樹 〒602 京都市上京区河原町通り広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学第1外科
受理年月日
1990年9月12日
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