症例報告
回腸膀胱瘻を伴ったCrohn病の1例
澁澤 三喜, 松井 渉, 加藤 貴史, 上地 一平, 吉澤 太人, 中尾 健太郎, 加藤 貞明, 角田 明良, 小池 正
昭和大学外科
尿路感染症として発症した回腸膀胱瘻を伴う回盲部Crohn病の1例を経験した.症例は63歳の女性で,腎盂腎炎から慢性腎不全となり血液透析を受けていたがその後も膿尿が続き,腸管膀胱瘻が疑われ入院した.注腸造影にて回盲部Crohn病と診断,さらに膀胱への瘻孔も確認され開腹術を施行した.回腸末端より約10 cm口側に膀胱腸瘻を認め,回盲部切除および膀胱部分切除を施行した.切除標本では終末回腸は全周性に肥厚し,瘻孔付近にはcobble-stone appearanceが,さらに口側に約25 cmにわたり縦走潰瘍が認められた.組織学的にも全層性の炎症性変化,裂溝形成がみられCrohn病と診断された.
著者の調べえた限りでは,本邦におけるCrohn病による腸管膀胱瘻の報告例は本症例を含め33例で女性は2例に過ぎない.本症例はCrohn病としては比較的高齢の女性であり,慢性腎不全を併発した例は報告がない.
索引用語
ileovesical fistula, Crohn's disease, chronic renal failure
別刷請求先
澁澤 三喜 〒142 品川区旗の台1-5-8 昭和大学医学部外科学教室
受理年月日
1990年10月11日
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