症例報告
消化管領域に限局した4重複癌の1例
安井 仁, 清水 正啓, 山田 明, 前田 知行, 小林 義典
愛生会山科病院外科
過去18年間に上行結腸癌,早期胃癌,直腸癌および残胃癌の消化管領域に限局した異時性4重複癌が発生し,そのおのおのに右半結腸切除術,幽門側胃切除術,腹会陰式直腸切断術および残胃全摘除術の根治手術を施行しえた75歳,男性の症例を経験した.患者はおのおのの手術後,再発なく社会復帰を果たすことができた.本症例は当院において長期に経過観察する過程で比較的早期に発見され,すべて根治手術が可能であった.重複癌発生の特殊要因は認めなかった.
4・5重複癌は臨床例,剖検例をあわせて本邦で107例報告されているが,このうち消化器に限局したものは15例である.本邦における剖検重複癌の統計的検討を行った.重複癌の悪性腫瘍に占める頻度は10年間で倍増しており,かつ4重複以上の高次重複癌が増加する傾向があるので,術前・術後の他臓器原発癌に対する配慮が重要である.
索引用語
multiple cancer, metachronous quadruple cancer, gastrointestinal tract
別刷請求先
安井 仁 〒602 京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465 京都府立医科大学第2外科
受理年月日
1990年9月12日
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