症例報告
充実性腫瘍像を呈した先天性肝嚢胞(前腸性肝嚢胞)の1例
佐々木 正寿, 八木 真悟, 鈴木 衛, 魚津 幸蔵, 長谷川 洋, 関川 博
富山赤十字病院外科
画像診断上,充実性腫瘍の像を呈し術前診断が困難であった,線毛性前腸性肝嚢胞の1症例を経験したので報告した.症例は63歳の女性で,肝硬変の経過観察中に肝の小腫瘤を発見された.腹部超音波検査では,肝左葉内側区域に径2.4 cmの内部エコーを有する低エコーの腫瘍がみられ,充実性の腫瘍が疑われた.腹部computed tomography(以下CTと略す)では,単純CTで周囲肝よりやや低濃度,造影CTで染まらない腫瘤像がみられた.Magnet resonance imagingでは,T1強調画像で周囲肝より等~低信号,プロトンでわずかに低信号,T2強調画像で高信号を示す腫瘤として描出された.充実性腫瘍が疑われ,肝細胞癌を否定できないため,手術を施行した.腫瘍核出術を行った.切除標本では腫瘍は嚢腫で,内部には白色の粘稠な液体を有していた.内面は線毛を持つ細胞で覆われており,病理学的診断は線毛性前腸性肝嚢胞であった.
索引用語
congenital liver cyst, ciliated hepatic foregut cyst
日消外会誌 24: 2579-2583, 1991
別刷請求先
佐々木正寿 〒930 富山市東田地方町1-5-25 富山赤十字病院外科
受理年月日
1991年5月8日
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