症例報告
食道全摘を要した甲状腺癌の1例
阿部 元, 沖野 功次, 迫 裕孝, 石橋 治昭, 寺田 信國, 柴田 純祐, 小玉 正智, 中根 佳宏
滋賀医科大学第1外科, 近江八幡市民病院外科
食道粘膜下組織にまで浸潤していたために,食道全摘を行い胃管にて再建した再発性甲状腺癌の1例を経験したので報告する.症例は33歳男性であった.1985年に甲状腺癌にて左葉部分切除を受けており,今回頸部腫瘤を主訴として来院した.頸部超音波検査およびcomputed tomography,magnetic resonance imazingにて食道浸潤が疑われる再発性甲状腺癌と診断された.手術所見では,頸部食道に5 cmにわたって直接浸潤している甲状腺左葉発生の乳頭癌を認め,頸部食道を合併切除した.遊離空腸で再建しようとしたが,吻合すべき血管が得られず,やむなく食道全摘を施行し,有茎胃管による再建を行った.
分化型甲状腺癌は比較的予後良好であるが,周囲組織に浸潤している場合には,積極的に合併切除すべきと考えられた.
索引用語
papillary carcinoma of thyroid, direct invasion to esophagus from thyroid carcinoma, pharyngoesophageal reconstruction
日消外会誌 25: 1052-1055, 1992
別刷請求先
阿部 元 〒520-21 大津市瀬田月輪町 滋賀医科大学第1外科
受理年月日
1991年12月10日
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