症例報告
穿孔性腹膜炎を来した高齢者Crohn病の1例
田中 雄二, 村上 勝, 大石 俊明, 岸本 肇*
国立療養所天竜病院外科, 同 内科*
78歳の男性に発症した,穿孔性腹膜炎を来したCrohn病の1例を報告する.
症例は腹痛を主訴に当院内科入院中,発熱と腹腔内遊離ガスが認められ緊急手術を施行された.開腹時,混濁した腹水を多量に認め,明らかな穿孔部位はなかったが回盲部から約80 cmの回腸に,およそ20 cmにわたり周囲と癒着し腸管壁が肥厚した個所が存在した.黄色のフィブリン膜が付着し明らかに炎症所見をともなっており,腹腔内洗浄ドレナージに加え小腸部分切除術が施行された.切除標本では縦走潰瘍が散在し,病理学的に小腸Crohn病と診断された.
60歳以上の高齢者Crohn病の頻度は少なく,穿孔で発症する例もまれである.小腸のみの高齢者Crohn病の予後は比較的良好であるといわれ,本症例も術後2年を過ぎる現在,再発の徴候なく外来通院中である.
索引用語
Crohn's disease in the elderly patient, spontaneous free perforation of the ileum
日消外会誌 25: 1123-1126, 1992
別刷請求先
田中 雄二 〒434 浜北市於呂4201-2 国立療養所天竜病院外科
受理年月日
1992年1月8日
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