特集
画像総合判定による原発性肝細胞癌の進展範囲診断の限界―切除標本との対比―
兼松 隆之*, 松股 孝, 山懸 基維, 足立 英輔, 池田 泰治, 林 洋, 浦田 啓子, 杉町 圭蔵
九州大学医学部第2外科(*現・長崎大学医学部第2外科)
最近5年間の原発性肝細胞癌(以下肝癌)切除112例を対象とし,切除標本からみた癌進展範囲に関する画像診断の限界について検討した.また,肝癌の診断あるいは疑いが捨てきれず,腫瘤を切除した症例で,組織学的には癌ではなかった例についても併せ分析した.その結果,(1)切除標本の肉眼所見からみた術前画像総合判定の正診率は78/112(70%)であった.(2)術前画像診断での総合判定以上の癌進展をみた症例は18/112(16%),また,逆に,術前の“読みすぎ”(false positive)は16/112(14%)であった.(3)術前画像診断での判定以上の癌進展は肝内転移(IM)因子に多く,これが確診されたのは,術中所見と標本の精査によるものが半々であった.(4)“読みすぎ”の手段としては血管造影が最多であった.(5)肝癌の診断の下に切除を行い,組織学的に肝癌ではなかった例は,4.6%に相当した.
索引用語
hepatocellular carcinoma, hepatic imagings, pathological diagnosis
日消外会誌 25: 1171-1174, 1992
別刷請求先
兼松 隆之 〒852 長崎市坂本町7-1 長崎大学医学部第2外科
受理年月日
1991年11月20日
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