原著
大腸癌におけるc-erbB-2蛋白発現と臨床評価
中江 史朗, 裏川 公章, 植松 清
神戸労災病院外科
大腸癌でのc-erbB-2蛋白発現と臨床病理学的諸因子,DNA ploidy patternとの関係を検討した.大腸癌切除44例の凍結標本でモノクロナール抗体を用いてc-erbB-2蛋白を染色し,flow cytometerで核DNA量を解析した.蛋白陽性率は25/44(56.8%)で,組織型では高分化型19/21,中分化型4/7,低分化型1/2,粘液癌1/1,深達度別ではm0/1,sm 1/2,pm 1/2,ss(a1)6/10,s(a2)15/23,si(ai)2/6であった.リンパ節転移ではn(-)16/26,n(+)9/18と差はなく,脈管侵襲ではly(-)2/8,ly(+)23/36と侵襲例の染色率が高い傾向がみられ,stageではI 1/4,II 11/16,III 3/6,IV 1/8,V/9/10で,stage VではI~IVに比べ陽性率が有意に高かった.DNA ploidy pattern別では,diploidy l1/14,aneuploidy 14/28で差はなかった.stage Vで発現頻度が有意に高かったことから大腸癌におけるc-erbB-2蛋白の発現は遠隔転移と関連し,DNA ploidyとは独立した悪性度の指標となる可能性が推察された.
索引用語
colorectal carcinoma, c-erbB-2 oncoprotein, DNA ploidy pattern
日消外会誌 25: 2755-2759, 1992
別刷請求先
中江 史朗 〒661 尼崎市南武庫之荘2-4-28
受理年月日
1992年7月6日
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