原著
直腸前方切除術およびS状結腸切除術における吻合法の検討―特にdouble stapling techniqueの有用性について―
田川 努, 太田 勇司, 仲野 祐輔, 永安 武, 足立 晃
田川市立病院外科
1983年1月から1990年8月までの直腸前方切除術と,肛門側切除端が直腸におよぶS状結腸切除術の再建時吻合法でdouble stapling technique(以下DSTと略す)15例,手縫い法10例を比較検討した.このうち低位前方切除術施行例における吻合後の肛門縁一吻合部間平均距離はDSTで5.9±2.5 cm,手縫い法で8.7±0.7 cmで有意にDSTが低位であった(p<0.05).平均手術時間はDSTで212.5±52.5分,手縫い法では296.0±42.5分で有意にDSTが短かった(p<0.05).全症例の手術合併症は,DSTは縫合不全,吻合部出血が各1例で吻合部狭窄はなく,手縫い法では腹壁膿瘍2例のほか,軽度の吻合部狭窄が1例に見られた.吻合様式はlinear staplerをcircular staplerが適切な位置でカットする端端型IとIIが望ましく,staplerが接する端側型Iは避けるべきで,端側型IIによる再建はハルトマン法術後の2期手術再建時に有用であった.DSTは高位前方切除術,肛門側切除端が直腸におよぶS状結腸切除術にも応用でき,低位前方切除術には特に有用と考えられた.
索引用語
rectum, anterior resection, double stapling technique, hand suture, Hartmann's operation
日消外会誌 25: 2773-2778, 1992
別刷請求先
田川 努 〒825 田川市中央町2-2 田川市立病院外科
受理年月日
1992年7月6日
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