症例報告
両側卵巣転移術後に発見された早期胃癌の1例
落合 正宏, 今津 浩喜, 船曵 孝彦, 丸上 善久, 山口 久, 亀井 克彦, 福井 博志, 長谷川 茂, 新井 一史, 谷口 正美, 浦口 貴, 森下 浩, 菅沼 正司, 四方 敦, 笹山 可則, 信田 俊英, 澤田 富夫*
藤田保健衛生大学船曵外科, 同 産婦人科*
胃癌の卵巣転移は臨床上しばしば経験するが,早期胃癌の卵巣転移報告例はいまだ少なく,本邦では現在まで6例を数えるのみである.今回われわれは卵巣転移を契機に発見された早期胃癌の1例を経験したので報告する.
症例は33歳の女性で,検診にて卵巣腫瘍を発見され,両側卵巣摘除を行いKruckenberg腫瘍と診断した.術後の検査で胃角上部後壁のIIc型早期胃癌を認め,幽門側胃亜全摘,R2の手術を施行した.病理所見は印環細胞癌,sm,ly2,v0,n2(+)であった.2度にわたる開腹所見にてP0,H0であり,後腹膜リンパ節の腫大は触知しなかった.術後1年の現在,再発の徴候を認めていない.
胃癌の卵巣への転移経路については古くから検討されてきたが,対象のほとんどが進行癌で複数の転移巣を有することが多いため解析が困難なことが少なくなかった.早期癌ではこの点で有利であると考え,集計報告6例を合わせ転移経路についての考察を加えた.
索引用語
early gastric carcinoma, ovarian metastases, routes of metastasis
日消外会誌 25: 2794-2798, 1992
別刷請求先
落合 正宏 〒470-11 豊明市沓掛町田楽ケ窪1-98 藤田保健衛生大学船曳外科
受理年月日
1992年6月17日
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