症例報告
胃癌と胃平滑筋肉腫が併存した1例
佐藤 篤司, 鳥居 敬, 小林 学, 春日井 貴雄, 木村 昌弘, 堀田 哲夫
国立療養所恵那病院外科
同一胃に癌と平滑筋肉腫が独立して併存した1例を報告した.症例は73歳の男性で,歩行時浮遊感を主訴に来院した.血液一般検査でHb 6.7 g/dlと著明な貧血を認めた.上部消化管造影X線検査・上部消化管内視鏡検査では,胃底部後壁に粘膜下腫瘍,体部前壁にBorrmann 2型様胃癌がそれぞれ独立して併存していた.生検の結果は平滑筋腫瘍,adenocarcinomaだった.諸検査後,胃全摘術を施行した.平滑筋腫瘍は胃の内腔へ10×6×5.5 cm,壁外へ11×9×7.5 cmの内外型発育を示す巨大な平滑筋肉腫だった.その断面は白色分葉状で,出血・壊死巣が散在していた.癌はmoderately differentiated papillo-tubular adenocarcinomaで,深達度は粘膜下層までにとどまり,リンパ節転移のない早期癌だった.同一胃に癌と平滑筋肉腫が独立して併存することはまれであり,本邦では自験例を含め28例の報告があるのみである.若干の文献的考察を加えて報告した.
索引用語
carcinoma and leiomyosarcoma of stomach
日消外会誌 25: 2799-2803, 1992
別刷請求先
佐藤 篤司 〒467 名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1 名古屋市立大学医学部第2外科
受理年月日
1992年6月17日
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