症例報告
肝膿瘍形成をきっかけに発見された進行胃癌の1手術例
島貫 公義, 宮田 道夫, 萬代 恵治, 山田 茂樹*
自治医科大学附属大宮医療センター外科, 病理*
肝膿瘍腔の経皮経肝膿瘍ドレナージ(percutaneous transhepatic abscess drainage:以下PTAD)施行時に胃内腔との交通を認め,同時に進行胃癌が発見された症例を報告する.症例は60歳の男性,発熱を主訴とし,腹部超音波検査,computed tomography検査にて肝左葉に肝膿瘍を認めた.肝膿腸はPTADと抗生剤による腔内洗浄により退縮し,炎症所見の消失を認めた.膿瘍腔造影において胃内腔との交通を認め,胃内視鏡および上部消化管造影検査を施行したところBorrmann分類不能な進行胃癌を認めた.肝膿瘍の原因検索を行ったが,肝癌,肝転移,および胆道系の病変は認められず,胃全摘術と肝外側区域切除を施行した.病理所見では切除肝の被膜への胃癌浸潤を認めたが,膿瘍形成部位での癌浸潤は確認されなかった.胃癌の壁外性直接浸潤および穿通により,肝被膜破綻をきたし,消化液による肝臓実質の壊死および感染にて肝膿瘍を形成したものと思われた.
索引用語
liver abscess, gastric cancer
日消外会誌 25: 2804-2807, 1992
別刷請求先
島貫 公義 〒330 大宮市天沼町1-847 自治医科大学大宮医療センター外科
受理年月日
1992年7月6日
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