症例報告
十二指腸に浸潤した肝細胞癌の1例
小林 道也, 緒方 卓郎, 金子 昭, 浜田 伸一, 松浦 喜美夫, 荒木 京二郎
高知医科大学第1外科
肝細胞癌の十二指腸浸潤を内視鏡的に診断しえた1例を経験したので報告する.症例は47歳の男性で,全身倦怠感を主訴に近医受診.上部消化管透視,CTにて十二指腸平滑筋肉腫とその多発性肝転移の疑いで当科紹介入院となる.貧血と肝機能障害を認め,HBs Ag(+),α-fetoprotein高値で血管造影で肝細胞癌と診断された.内視鏡で十二指腸球部前壁に茶褐色の不整な潰瘍を認め,生検でEdmondson III型程度に相当する肝細胞癌の所見が得られた.以上より肝細胞癌の十二指腸浸潤と診断し十二指腸球部の潰瘍からの出血のため開腹術が施行された.肝左葉より肝外性に発育した腫瘍が十二指腸球部に直接浸潤していた.術後38日目に肝不全で死亡した.剖検所見では肝細胞癌が肝左葉を中心として発育し,両葉に多数の肝内転移を認め連続性に十二指腸へ浸潤し瘻孔様になっていた.十二指腸への転移,浸潤例はまれで,本邦での報告例はわずか11例のみである.文献的考察を加えた.
索引用語
hepatoma, duodenal invasion of hepatoma, metastasis of hepatoma to the duodenum
日消外会誌 25: 2808-2812, 1992
別刷請求先
小林 道也 〒781-51 南国市岡豊町小蓮 高知医科大学第1外科
受理年月日
1992年6月17日
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