症例報告
腹腔鏡下に行う選択的近位迷走神経切離術
桜町 俊二, 木村 泰三, 吉田 雅行, 小林 利彦, 松田 寿夫, 後藤 秀樹, 高林 直記, 今泉 強, 原田 幸雄
浜松医科大学第1外科
近年の消化性潰瘍に対する内科治療の進歩はめざましく,これに伴って外科治療は,その侵襲の大きさゆえに適応を縮小してきた.今回われわれは,十二指腸潰瘍の外科治療として行われている選択的近位迷走神経切離術を低侵襲に行うことを目的として,本術式を腹腔鏡下に施行した.症例は51歳男性で,十二指腸潰瘍の再発例である.5本のトラカールを挿入し,腹部食道から前庭部のcrow's footの手前までにわたって胃壁に進入する迷走神経の枝を前後枝とも選択的に切離した.術中術後に問題なく,創痛は軽度で,回復はすみやかであった.術後1か月の胃液検査では,基礎分泌,テトラガストリンによる刺激分泌の減酸率はそれぞれ70.9%,42.7%であり,Hollander testは陰性であった.本手術は操作が困難で熟練を要し,時間がかかるという問題点がある.手技および器具の改良により,安全容易なものとすることが,本手技の普及のために必要と考えられた.
索引用語
laparoscopic selective proximal vagotomy, surgical treatment of duodenal ulcer
日消外会誌 25: 2813-2817, 1992
別刷請求先
桜町 俊二 〒431-31 浜松市半田町3600 浜松医科大学第1外科
受理年月日
1992年7月6日
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