症例報告
重症肝破裂と肝後面下大静脈損傷の1治験例
古谷 四郎, 大守 規敬, 今井 茂郎, 辻 尚志, 川上 俊爾, 小野 監作, 大塚 康吉, 佐藤 泰雄
岡山赤十字病院外科
肝後面下大静脈損傷の重症肝破裂の1例を肝右葉切除,損傷部縫合により救命したので報告した.患者は20歳の女性で,交通事故で搬入され2時間後ショックとなり,受傷6時間後に緊急手術を行った.肝右葉に破裂あり,用手圧迫を試み,出血量が減少したので肝門部処理後肝右葉切除を行った.右肝静脈の完全断裂と下大静脈1.5 cmの損傷が2か所見られ,それぞれ連続縫合止血した.また空気塞栓の予防のために術野を炭酸ガスで充満させた.
下大静脈損傷肝破裂は救命率も低いが,用手による圧迫とPringle maneuver法の併用で一時的止血を行ってから,循環動態の回復を待って肝切除を行い下大静脈損傷部の縫合を行う方法が大量出血を制御でき,患者を救命できると思われる.
また空気塞栓予防には術野を炭酸ガスで充満させるのが有効である.
索引用語
liver injury, retrohepatic inferior vena cava injury, air embolism of inferior vena cava
日消外会誌 25: 2823-2827, 1992
別刷請求先
古谷 四郎 〒700 岡山市青江65-1 岡山赤十字病院外科
受理年月日
1992年6月17日
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