症例報告
放射線照射後に切除した門脈本幹に腫瘍塞栓を伴った肝細胞癌3例
嶋村 剛, 中島 保明, 佐藤 直樹, 松岡 伸一, 三澤 一仁, 神山 俊哉, 長淵 英介, 今 裕史, 川村 秀樹, 津田 一郎, 宇根 良衛, 内野 純一
北海道大学第1外科
門脈本幹に腫瘍塞栓を合併する肝細胞癌3例において,腫瘍塞栓に対し放射線照射を施行し,腫瘍塞栓の縮小後に肝切除を行った.症例は39歳の女性,57歳の男性,38歳の男性で,術前に腫瘍塞栓に対し30.0~34.5 Gyの放射線照射を施行した.全例で腫瘍塞栓の門脈1次分枝までの退縮を認め,おのおの右3区域切除,拡大右葉切除,右葉切除を定型的に行った.病理組織学的変化では,全例に腫瘍塞栓の変性,壊死が高度に認められ,術中操作による経門脈性播種の危険性を低下させると考えられた.術前放射線照射を併用しなかったVp3切除症例の平均生存期間が診断より7.5か月,術後無再発期間の平均が1.7か月であったのに対し,これら術前放射線照射を併用した肝切除症例では,おのおの13.3か月,5.3か月と有意に延長しており,術前放射線照射併用肝切除術の有効性が示唆された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, portal tumor thrombus, hepatectomy after radiation therapy
日消外会誌 25: 2828-2832, 1992
別刷請求先
嶋村 剛 〒060 北海道札幌市北区北15条西7丁目 北海道大学医学部第1外科
受理年月日
1992年6月17日
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