症例報告
門脈・右肝動脈合併切除を必要とした漿液性膵嚢胞腺腫の1例
山崎 信保, 尾池 文隆, 真部 一彦, 長谷川 正樹, 高木 健太郎, 小山 高宣
新潟県立中央病院外科
閉塞性黄疸にて発症し,門脈・右肝動脈の合併切除を必要とした漿液性膵嚢胞腺腫の1例を経験したので報告する.患者は59歳の女性で,全身掻痒感と黄疸を主訴として来院,上腹部に腫瘤を触知した.腹部超音波検査・computed tomographyにて直径6 cmの腫瘍を膵頭部に認め,経皮的胆嚢ドレナージよりの胆汁細胞診でClass Vが得られたため膵頭十二指腸切除術を施行した.しかし腫瘍の門脈への強固な癒着と,上腸間膜動脈より起始した右肝動脈の巻き込みを認めたため,この両者の合併切除を余儀なくされた.右肝動脈の再建は失敗し,さらに左肝動脈も術中操作の影響で術後の血流が途絶したが,肝不全症状は術後一過性であり患者は順調に回復した.切除標本より漿液性嚢胞腺腫であることが判明,術前胆汁細胞診も胆道由来の再生上皮と訂正されたが,良性腫瘍であるにもかかわらず,門脈だけでなく膵内胆管・主膵管壁にも強い圧迫伸展を示す,興味深い症例であった.
索引用語
serous cystadenoma of the pancreas, obstructive jaundice due to cystadenoma of the pancreas, pancreatoduodenectomy with vascular reconstruction
日消外会誌 25: 2843-2847, 1992
別刷請求先
山崎 信保 〒798 宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院外科
受理年月日
1992年6月17日
|
PDFを閲覧するためにはAdobe Readerが必要です |
|