症例報告
潰瘍性大腸炎に併存し急速に進行したS状結腸癌の1例
竹内 信道, 福島 恒男, 杉田 昭, 嶋田 紘, 久保 章1), 高橋 利通1)
横浜市立大学医学部第2外科, 横須賀市立市民病院外科1)
30歳の男性.19歳で全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断されたが症状は乏しかった.1990年8月に行った注腸検査では隆起性病変は認められなかったが,1991年2月より便柱の細小化と裏急後重が生じ,下血も認められ,4月8日に潰瘍性大腸炎の再燃の疑いで緊急入院した.ステロイドの強力静注療法を行ったところ下血は改善したが,S状結腸に全周性の狭窄を認め,S状結腸癌の合併した潰瘍性大腸炎と診断して開腹術を5月11日に施行した.しかし高度の腹膜播種と周囲への直接浸潤により切除不能であった.化学療法と免疫療法を行ったが奏効せず,術後47日目に呼吸不全で死亡した.発症後10年以上経過した全大腸炎型潰瘍性大腸炎患者に対して1年に1回のcancer surveillanceの施行が推奨されている. しかし本症例はこの方法で早期に癌が発見できたかは疑間であり,予防的治療も含め症例に応じた対応が必要と思われた.
索引用語
ulcerative colitis, colonic cancer, cancer surveillance
日消外会誌 25: 2868-2872, 1992
別刷請求先
竹内 信道 〒236 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部第2外科
受理年月日
1992年6月17日
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