症例報告
家族性大腸腺腫症に対する回腸肛門吻合術後に妊娠出産した3症例の経験
岩間 毅夫, 今城 眞人*, 榎本 雅之, 豊岡 正裕, 富田 浩, 鄭 炳椿, 石田 秀行, 北郷 邦昭, 嘉和知 靖之, 吉永 圭吾, 三島 好雄
東京医科歯科大学第2外科, 草加市立病院外科*
女性においては回腸肛門吻合術後の生活の質を評価する重要な要素として,妊娠,出産を挙げることができる,家族性大腸腺腫症に対して行われた回腸肛門吻合術後の出産例3例を経験したので報告し,妊娠中の排便状況の変化および合併症につき検討した.3例とも術後の肛門管最大静止圧は70 cmH2O以上(正常100 cmH2O)であった.いずれも帝王切開による出産で,子に異常を認めなかった.帝王切開の適応は,それぞれ症例1は胎児の横位,症例2は頻回腹部手術,および症例3は妊娠後期のイレウスによる腸切除術であった.妊娠前の排便回数は1日6~8回であり,失禁はなかった.妊娠中,および出産前後において排便状況が悪化することはなかった.回腸肛門吻合術後の出産は十分可能で,子にも問題ないことが示された.妊娠は回腸肛門吻合術後の排便機能に悪影響は及ぼさないと結論された.ただし妊娠中イレウスの発生に注意すべきである.
索引用語
ileo-anal anastomosis, pregnancy, defecational function
日消外会誌 27: 2600-2604, 1994
別刷請求先
岩間 毅夫 〒113 文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学医学部第2外科
受理年月日
1994年9月14日
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