原著
肝細胞癌患者における凝固線溶系分子マーカー
中川 隆公, 宇根 良衛, 嶋村 剛, 神山 俊哉, 秦 庸壮, 松下 通明, 佐藤 直樹, 中島 保明, 内野 純一
北海道大学医学部第1外科
肝細胞癌(HCC)患者において凝固線溶系とthrombin-antithrombin III complex(以下,TATと略記),plasmin-α2-plasmin inhibitor complex(以下,PICと略記),D-dimerとの関連を,臨床所見および病理組織学的因子から検討した.最近3年間に教室で肝切除術を施行した75症例を対象とした.TAT,PIC,D-dimerの平均値(mean±S.E.)はそれぞれ4.49±0.58 µg/l,1.36±0.07 µg/ml,1.325±0.270 µg/mlであり,いずれも高値であった.非癌部肝組織像,腫瘍細胞の分化度,被膜形成の有無,門脈侵撃の有無と相関はなかった.StageとTATは正の相関がみられ(p=0.064),肝内転移とD-dimerは有意な正の相関をみとめた(p=0.005),HCCの肝内転移の進展と凝固線溶亢進との関連が示唆された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, thrombin-antithrombin III, D-dimer, plasmin-α2-plasmin inhibitor complex, intrahepatic metastasis
別刷請求先
中川 隆公 〒060 札幌市北区北15条西7丁目 北海道大学医学部第1外科教室
受理年月日
1994年10月12日
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