症例報告
発症後早期の保存的治療が奏効した特発性食道破裂の1例
瀧島 常雅, 三重野 寛喜*, 中山 義介*, 塚本 秀人*, 浅利 靖, 平田 光博, 坂本 いづみ*, 小川 憲章*, 佐藤 光史*, 比企 能樹*, 柿田 章*
北里大学医学部救命救急医学, 同 外科*
保存的治療が奏効した特発性食道破裂の1例を報告した.症例は59歳の男性で,嘔吐した直後の心窩部痛で発症した.発症から約7時間で来院し,全身状態も安定していたが保存的治療を行った.来院時胸部単純X線写真やCTでは縦隔気腫と少量の胸水を認めたのみで気胸はなく,同日の上部消化管X線検査(以下,UGI)で造影剤の管外漏出を認めなかった.第3病日のUGIで下部食道から造影剤の管外漏出を認めたが,これは縦隔内に留まり胸腔内に流入しなかったため,保存的治療を続行した.UGIと内視鏡で破裂部の治癒傾向を確認したうえで第64病日に食事を開始し,第78病日に退院した.従来の特発性食道破裂に対する保存的治療報告例は,ほとんどが診断遅延例や,全身状態不良例であつたが,発症後早期でも食道からの内容物の漏出が縦隔内の小範囲に留まり,縦隔膿瘍や膿胸の合併がなければ,本症に対する保存的治療が可能な症例もあると考えた.
索引用語
spontaneous esophageal rupture, Boerhaave's syndrome, conservative therapy
別刷請求先
瀧島 常雅 〒228 相模原市北里1-15-1 北里大学医学部救命救急医学
受理年月日
1994年10月12日
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