会長講演
食道癌治療へのアプローチ
三富 利夫
東海大学医学部外科学2
教室で20年間にわたり取り組んできた食道癌の治療につき述べる.
放射線照射で始まった食道癌の治療は次第に外科手術の成績が認められるようになった.初期には切除率の向上を目指して,次いで,頸胸腹部3領域リンパ節郭清術が広く行われるようになったが,早期表在癌発見例の増加,高齢化社会の到来とともに治療法を選択する時代となってきた.
早期表在癌については鍋谷,三富,遠藤の集計があり,次第に粘膜癌の増加が認められ,われわれの施設では表在癌が25%を占めるようになっている.早期癌の発見にはENNGによる実験発癌の経験が役立ち,頭頸部癌症例やアルコール依存症のスクリーニングが有用であつた.早期癌に対する内視鏡的粘膜切除術の開発とその臨床応用も進み,拡大リンパ節郭清術に対する適応の制限,免疫・化学療法の進歩,主病巣やリンパ節転移診断の進歩などもあいまって,近い将来新しい展開が期待される.
索引用語
esophageal surgery, treatment of esophageal cancer, endoscopic mucosal resection for esophageal cancer, screening of esophageal cancer, chemically induced esophageal cancncer in canine
日消外会誌 28: 1901-1910, 1995
別刷請求先
三富 利夫 〒259-11 伊勢原市望星台 東海大学医学部第2外科
受理年月日
1995年6月14日
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