原著
食道癌患者の術後肺合併症発生の予測―単一因子分析とロジスティック回帰分析による検討―
白尾 一定
鹿児島大学第1外科学教室(主任:愛甲 孝教授)
食道癌患者の術前状態から術後肺合併症の発生を予測することを目的として単一因子分析とロジスティック回帰分析を行い,術後肺合併症の発生の予測を試みた.右開胸によって切除した胸部食道癌88例を対象とした.前期は,肺合併症の発生の予測式をretrospectiveに作成した.前期の肺合併症の発生率は32%(15/47)であつた.単一因子分析では年齢,出血量,%理想体重,血漿トランスフェリン,肺活量および1秒量は術後肺合併症の有無で有意差が認められた.ロジスティック回帰分析の結果,肺合併症発生の危険因子は肺活量と%理想体重およびプレアルブミンであった.術期では判別式に基づいて肺合併症の発生をprospectiveに検討した.後期は3領域リンパ節郭清の適応にロジスティック判別式を加味することにより肺合併症は9%(4/41)に減少した.ロジステイツク判別式を用いて肺合併症発生のhigh risk症例を術前にcheckし,術式の決定や術後の呼吸管理に利用することは,食道癌患者の術前・術後管理に有用と思われた.
索引用語
esophageal cancer, multiple logistic regression analysis, pulmonary complication
日消外会誌 28: 1911-1918, 1995
別刷請求先
白尾 一定 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1995年5月17日
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