症例報告
成人にみられたS状結腸重複症の1例
下山 孝俊, 西川 清臣, 吾妻 康次, 久野 博, 本庄 誠司, 松尾 誠司, 木田 晴海
国立嬉野病院外科
成人の大腸重複症は極めてまれである.気尿を契機に発見された26歳の男性のS状結腸重複症の1例を報告する.本症例は既往歴,家族歴に特記事項なく,約2年前に野球で走塁中に突然の腹痛と同時に気尿を認めるようになった.近医で保存的治療を受けたが,症状の緩解増悪を繰り返した.身体所見で特に変化はなく,注腸造影にてS状結腸から分岐した重複結腸がみられ,その末梢は盲端となっていた.膀胱造影で瘻孔は造影されなかつたが,膀胱鏡で不完全重複膀胱が示唆され,腰椎のX線写真で仙骨の2分脊椎がみられた.膀胱瘻を合併した管状のS状結腸重複症と診断し,重複腸管切除術を施行した.S状結腸の腸間膜側から分岐した30 cmの重複腸管で,病理組織学的には正常大腸壁と同じ構造であつた.なお異所性粘膜は認められなかつた.
索引用語
tubular duplication of sigmoid colon, pneumatouria, enterovesical fistula
日消外会誌 28: 1953-1956, 1995
別刷請求先
下山 孝俊 〒843-03 佐賀県藤津郡嬉野町 国立嬉野病院外科
受理年月日
1995年5月17日
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