症例報告
粘膜下層浸潤部に腺扁平上皮癌の組織像を呈し,急速な経過をたどった直腸繊毛腫瘍の1例
国枝 克行, 佐治 重豊, 本多 俊太郎, 吉田 明彦, 辻 恭嗣, 杉山 保幸, 梅本 敬夫, 深田 代造, 宮 喜一, 下川 邦泰*
岐阜大学第2外科, 同 臨床検査医学*
まれな組織型を呈し,術後1年で肝転移にて死亡した深達度smの繊毛型直腸癌の1例を経験した.症例は75歳の女性で,1990年4月,肛門出血を主訴として某医を受診し,直腸腫瘍を指摘され紹介入院となった.諸検査の結果,癌合併直腸絨毛腫瘍と診断し,経仙骨的腫瘍切除術を施行した.腫瘍は95×88 mm大の平板状で,粘膜層に限局した高分化腺癌が主体であつたが,7 mmの範囲で粘膜下層に浸潤し,癌先進部に腺扁平上皮癌が認められた.また壁在転移リンパ節を認めたため再手術を勧めたが,患者の了解が得られず,厳重経過観察とした.しかし,術後7か月目に強い疼痛を伴う局所再発と肝転移が確認され,再入院の上後方骨盤内臓摘除術を施行した.術後2か月目に皮膚転移が出現し,肝転移巣も急速に増大し,初回手術から1年後に死亡した.局所切除が一般化しつつある直腸繊毛腫瘍の中にも,非常に予後不良な症例が存在することを,念頭におくべきであると考えられた.
索引用語
villous tumor of the rectum, adenoacanthoma, poorly differentiated adenocarcinoma
日消外会誌 28: 1957-1961, 1995
別刷請求先
国枝 克行 〒500 岐阜市司町40 岐阜大学第2外科
受理年月日
1995年5月17日
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