症例報告
上腸間膜動脈末梢部血栓による小腸虚血症の1治験例
赤木 由人, 福島 駿, 奥 洋, 末吉 晋, 金澤 昌満, 高宮 博樹, 掛川 暉夫*
大牟田市立病院, 久留米大学第1外科*
腸間膜動脈血栓症は診断が困難であるが,適切な治療が早く開始されれば救命率も高くなる疾患と思われる.また本症の多くは基礎疾患が存在し血栓形成準備状態にある場合に発症する.
基礎疾患を有しない51歳の女性で,回腸肛門側の腸間膜末梢部に比較的早期の血栓症と思われる症例を経験した.初期の診断がつかず,発症15時間後に粘血便を認め本症を疑ったが,すでに筋性防御が出現しており汎発性腹膜炎の診断で開腹による回腸部分切除を行った.自験例の発生機序は何らかを誘因として血管側と腸管側の両方の因子が関与していたものと考えられた.しかし原因について検討したが不明であった.高齢者でなく,基礎疾患も有しない急性腹症患者の鑑別診断の1つに,まれではあるが本症も考慮すべきで疾患であると思われた.
索引用語
acute abdominal pain, ischemic ileitis, peripheral superior mesenteric arterial thrombosis
日消外会誌 28: 2032-2036, 1995
別刷請求先
赤木 由人 〒830 久留米市旭町67 久留米大学第1外科
受理年月日
1995年6月14日
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