原著
肝切除,肝動脈遮断下における門脈部分動脈化術の意義に関する実験的検討
武山 聡
北海道大学医学部第2外科(主任:加藤紘之教授)
40%肝切除下に肝動脈血行を遮断し,門脈部分動脈化術の有効性を検討した.雑種成犬18頭を用い,肝動脈速断+肝切除群(HAL),肝動脈遮断+門脈部分動脈化+肝切除群(APS),単純肝切除群(CON)を作成した.肝切除により残肝重量あたりの総肝血流量や酸素供給量は肝動脈遮断下のHAL群においても相対的に前値以上を維持した.酸素消費量は肝動脈遮断後のHAL群で72%に有意に減少し,摂取率も低下した.生化学や組織標本ではAPS群はCON群同様の所見を呈したが,HAL群では著明な肝不全の所見を呈し,光顕像での虚血性変化も顕著であった.AgNORでの肝再生の評価ではAPS群はCON群同様,十分な発現を示し,HAL群では有意に抑制された.以上より肝重量あたりの肝血流を維持しても,酸素分圧の低い門脈血単独では酸素利用の障害をきたし,肝不全を回避しえないことが明らかになった.したがって肝不全の予防のためには,組織の酸素分圧の正常化が重要な要因と考えられた.
索引用語
arterio-portal shunt, oxygen metabolism of the liver, histopathological findings, argyrcphilic nucleolar organizer regions
日消外会誌 28: 2159-2167, 1995
別刷請求先
武山 聡 〒060 北海道札幌市北区北14条西5 北海道大学医学部第2外科
受理年月日
1995年7月5日
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