原著
呼吸筋力測定からみた食道癌術後早期の呼吸機能の検討
斎藤 元, 阿保 七三郎, 北村 道彦, 南谷 佳弘, 松本 秀一, 天満 和男, 斎藤 礼次郎, 本山 悟, 松崎 郁夫
秋田大学第2外科
食道癌術後早期には呼吸機能低下を認めるが,その原因については十分検討されていない.今回,我々は食道癌術後早期の呼吸機能低下を呼吸筋力の面から検討した.1995年2月から9月の間に右開胸,胸腹部食道全摘,後縦隔経路頸部食道胃管吻合術を施行した食道癌患者13例を対象とした.呼吸筋力の指標として最大吸気口腔内圧(MIP)と最大呼気口腔内圧(MEP),骨格筋力の指標に握力を,術前日,第3,4,5,6,7,14,21病日に測定した.MIP,MEPは,それぞれ第3病日で術前の42.2%,34.7%と有意な低下を認め,21病日には87.2%,86.4%に回復し,FVC,FEV1.0との間にそれぞれ有意な相関を認めた.一方,握力はMIP,MEPとの間に強い相関を認めなかった.以上の結果から術後呼吸機能評価の指標としてMIP,MEPは有用と考えられ,食道癌術後早期の呼吸機能低下には骨格筋力など全身的因子よりも呼吸筋障害,肺・胸郭complianceの低下など局所的要因が強く影響していると推測された.
索引用語
esophageal cancer, postoperative respiratory function, respiratory muscle strength, maximal inspiratory pressure, maximal expiratory pressure
別刷請求先
斎藤 元 〒010 秋田市本道1-1-1 秋田大学医学部第2外科
受理年月日
1996年1月10日
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