原著
肝転移に及ぼすラット肝虚血再灌流の影響について
塩谷 雅文, 具 英成, 斎藤 洋一
神戸大学第1外科
肝虚血-再灌流障害によるラット腹水肝癌(AH-130)の肝転移促進効果を検討した.ラットをI群:単開腹群(n=8),II群:20分肝虚血群(n=7),III群:30分肝虚血群(n=8)に分けた.肝虚血にはII,III群とも中葉と左葉の支配動脈および門脈を一括遮断した.I群は開腹10分後に,II,III群は虚血解除10分後にAH130腫瘍浮遊液(1×106 cells/ml)を陰茎静脈よりl ml投与した.10日後に犠死させ肝臓の肉眼的転移個数および単位肝重量あたりの腫瘍結節数(MI,個/g・肝重量)を右葉および中葉+左葉で比較した.I群では右葉のMIは0.6±0.7(mean±SD),中棄+左葉は1.0±1.3で差はなかった.II群の右葉のMIは1.0±1.1であったのに対し,虚血葉では3.4±2.8と有意に高値を示した(p<0.05).III群でも虚血,非虚血葉のMIはおのおの17.5±15.2および6.7±7.3となり明らかな差を認めた(p<0.05).中葉+左葉のMIはI群よりII群が,II群よりIII群が有意に高かった(p<0.05).以上より肝虚血-再灌流障害により血行性肝転移が促進される可能性が示唆された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, ischemia-reperfusion injury, hepatic metastasis
別刷請求先
具 英成 〒650 神戸市中央区楠町7-5-2 神戸大学医学部第1外科
受理年月日
1996年1月10日
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