原著
門脈CT,動脈CTおよび両者併用による肝腫瘍鑑別診断の検討
初瀬 一夫, 青木 秀樹, 相原 司, 村山 道典, 坪井 賢治, 大渕 康弘, 重政 有, 柿原 稔, 玉熊 正悦, 寺畑 信太郎*
防衛医科大学校第1外科, 同 中検病理*
血管造影下にCTを撮影するAngic CT(門脈相CT:CTAP,動脈相CT:CTHA)後肝切除を施行した50例を対象とし,腫瘍性病変の診断能を検討した.悪性腫瘍89(HCC 28,転移性肝癌41),HCC境界病変,17,良性腫瘍10の計96個が組織学的に確認された.1.5 cm以下の小腫瘍はHCC境界病変17以外に28個みられた.全腫瘍性病変描出率はCTAP 89.6%,CTHA 77%,併用90.6%であった.HCC境界病変17の描出率はCTAP 76.5%,CTHA 35.3%で,CTHAの描出率は不良であった.このことは硬変肝の小腫瘍で,CTHAで描出困難な場合境界病変の可能性が高いことを示唆した.一方,HCC境界病変を除いた28小腫瘍中,CTHAは19個(69%)を描出しえた.これらの中で悪性腫瘍9,良性腫瘍1がリング状濃染を呈した.このリング状濃染を小腫瘍の悪性診断基準とすると正診率84%であった.以上のことから肝内腫瘍性病変診断にはCTAPが有用であり,CTHAは特に小腫瘍の境界病変診断ならびに良悪性鑑別診断に有用であることが示唆された.
索引用語
hepatocellular carcinoma, hepatic metastasis, borderline lesions, computed tomography during arterial portography and hepatic arteriography
別刷請求先
初瀬 一夫 〒359 所沢市並木3-2 防衛医科大学校第1外科
受理年月日
1996年1月10日
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