原著
長期追跡結果からみた大腸sm癌の治療方針に関する検討
長谷 和生, 望月 英隆*, 宇都宮 勝之, 吉積 司*, 吉村 一克*, 倉永 憲二, 小林 秀紀, 渡邉 千之, 石山 賢, 玉熊 正悦*
自衛隊中央病院外科, 防衛医科大学校第1外科*
大腸sm癌症例167例を対象に治療方針について検討した.前期(1971~89年)102例では全例に根治術を行い,術後5年以上追跡した,リンパ節(LN)転移率は13%で,転移陽性例は陰性例に比べ有意に再発率が高率で,癌死率曲線が不良であった.深達度:sm2, 3,smでの組織型:中・低分化,脈管侵襲(+),篠出(+),INFβを呈するものはLN転移率がそれぞれ有意に高率であり,これら5因子中4因子以上を有する症例では転移率は46%であったが,3因子以下では転移は皆無であった.後期(1990~93年)65例ではpolypectomy(EP)不能例(32例)と,EP施行例(33例)のうち4因子以上あるいはce(+)の症例に対してのみ根治術を行った.EP施行例のうち,4因子以上の11例のLN転移率は36%,3因子以下でce(+)の3例では転移がなく,残る3因子以下でce(-)の19例では根治術を行わず追跡中(平均44か月)であるが再発を認めていない.4因子以上の症例では早期根治術が必要であり,またLN転移陽性例では厳重な追跡と補充療法が必要と考えられた.
索引用語
colorectal cancer with submucosal invasion, risk factors for lymph node metastasis, long-term follow-up outcome
日消外会誌 29: 1013-1021, 1996
別刷請求先
長谷 和生 〒154 世田谷区池尻1-2-24 自衛隊中央病院外科
受理年月日
1995年12月6日
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