症例報告
Virchowリンパ節転移を伴った早期胃癌の1例―核DNAならびに癌関連遺伝子の検討―
松崎 圭祐, 戸田 智博, 吉田 勝俊, 川野 豊一, 三浦 修, 南園 義一, 長崎 進, 安井 弥*
(財)防府消化器病センター, 広島大学第1病理*
発見時既にVirchowリンパ節に転移を伴い,術後5か月で癌性腹膜炎にて死亡した早期胃癌症例を経験し,摘出標本について核DNA解析と癌関連遺伝子発現の検索を施行した.早期胃癌のVirchowリンパ節転移例の報告例は本邦ではわずか5例と稀であり,癌関連遺伝子の検索が行われた初の症例と考えられる.症例は50歳の女性で,胃内視鏡にて胃角部前壁の早期胃癌と診断され手術を施行した.入院時に左頸部から鎖骨上窩に小リンパ節を触知し,術中迅速病理にて転移と診断された.本症例は35×28 mm大のIIa病変で癌本体はm層にとどまりながら,sm浅層のリンパ管に著しい腫瘍侵襲を認めた.DNA ploidy patternではaneuploidy patternを示し,転移抑制遺伝子であるnm23の発現減弱が認められた.またc-erb B-2は原発巣,転移巣ともに著明な過剰発現を示したが,転移巣,リンパ管内の癌細胞は原発巣に比して発現が強く,遠隔転移における関与が示唆された.
索引用語
early gastric cancer with Virchow metastasis, cancer-related genes, nuclear DNA analysis
日消外会誌 29: 1040-1044, 1996
別刷請求先
松崎 圭祐 〒747 防府市駅南町14-33 (財)防府消化器病センター
受理年月日
1996年1月10日
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