症例報告
ソマトスタチン製剤と血液凝固第XIII因子製剤による胃癌術後膵液瘻の1治験例
西脇 学, 芦田 寛, 多田 均, 西岡 昭彦, 宇都宮 譲二
兵庫医科大学第2外科
膵液瘻は今日においても重篤な術後合併症であり,時には致死的経過をとることがある.今回,胃癌術後の膵液瘻に対して膵分泌抑制作用を持つsomatostatin analogue製剤(サンドスタチン®)と組織修復作用を持つ血液凝固第XIII因子製剤(フィブロガミン®)を併用することにより良好な経過を得たので報告する.症例は48歳,男性.他院にて早期胃癌の診断にて幽門側胃切除,Billroth II法再建をうけるも,術直後より膵損傷に起因する膵液瘻を発症し450 ml/day~1,800 ml/dayの膵液排出がみられ,さらに十二指腸断端し開による十二に指腸瘻と腹腔内出血による出血性ショックを併発した.当院へ緊急搬送され緊急開腹止血術の後,フィブロガミン®6 V/day静脈内投与とサンドスタチン®200 µg/day皮下投与を試みたところ,両瘻孔よりの排液量は激減し,膵液瘻は21日目に,十二指腸瘻は26日目に,合併症を認めることもなく急速に治癒させることが可能であった.
索引用語
somatostatine analogue, pancreatic fistula, duodenal suture insufficiency
日消外会誌 29: 1059-1063, 1996
別刷請求先
西脇 学 〒663 西宮市武庫川町1-1 兵庫医科大学第2外科
受理年月日
1995年12月6日
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