症例報告
結腸粘液癌を合併し,胃壁内への転移を来した原発性小腸癌の1例
河合 正巳, 松崎 安孝, 弥政 晋輔, 日江井 賢, 松永 宏之, 山口 喜正
津島市民病院外科
症例は68歳の男性で下血で発症し,血色素4.5g/dLと著明な貧血を認めた.胃内視鏡および小腸造影検査により胃癌と小腸腫瘍の重複癌と診断し手術した.空腸に15cm径の腫瘤を認め,第1,2空腸動脈を切離してこれを摘出し,さらに幽門側胃切除を施行した.また結腸肝彎曲に結腸粘液癌を認めたため,右半結腸切除を追加した.組織学的には小腸病変は印環細胞を伴わない粘液癌であったが結腸の粘液癌には印環細胞が多数認められた.胃の病変は粘膜下層に病変の主座があり,小腸病変に類似した粘液癌の中央に正常胃粘膜上皮の配列を認めた.以上より本例を小腸・結腸の重複癌および小腸癌の胃転移と診断した.術後は良好に経過し,術後1年5か月を経た現在は外来通院中で再発の徴候を認めない.小腸癌はまれで予後不良であり,小腸癌を原発とする胃転移癌の本邦での報告は認められなかった.
索引用語
primary small intestinal carcinoma, metastatic carcinoma to the stomach
日消外会誌 30: 1957-1961, 1997
別刷請求先
河合 正巳 〒496 津島市橘町3-73 津島市民病院外科
受理年月日
1997年4月23日
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