原著
早期食道癌に対する内視鏡的粘膜切除術の治療成績
福元 俊孝, 島田 麻里緒, 夏越 祥次, 中野 静雄, 吉中 平次, 白尾 一定, 貴島 文雄, 草野 力, 馬場 政道, 愛甲 孝
鹿児島大学第1外科
教室では,原則として深達度m2までの早期食道癌は内視鏡的粘膜切除(endoscopic mucosal resection,EMR)の対象としている.1992年5月から96年8月までにEMRによって切除された30症例,38病巣について,その適応の妥当性,治療成績について検討した.その結果,1)内視鏡所見は28病巣(73.7%)が,0-IIbまたは0-IIcであった.2)大きさは30病巣(78.9%)が20 mm以下であった.3)予測深達度と組織学的深達度の一致率はdysplasiaであった4例を除いて70.6%(24/34病巣)であった.4)合併症として,動脈性出血が5例(16.7%)に,穿孔,皮下気腫がそれぞれ1例(3.3%)にみられた.5)再発が3例,異時性食道癌が1例にみられ,いずれも再EMRを施行した.6)他病死1例,深達度sm3で手術を施行した1例が癌死した.その他は最長4年5か月を含め,全例生存中である.深達度m2までの,全周性でない癌はEMRの適応であり,その治療成績も満足できるものであった.
索引用語
esophageal superficial carcinoma, esophageal early carcinoma, endoscopic mucosal resection, endoscopic ultrasonography
日消外会誌 30: 1978-1984, 1997
別刷請求先
福元 俊孝 〒890 鹿児島市桜ケ丘8-35-1 鹿児島大学医学部第1外科
受理年月日
1997年5月21日
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