症例報告
腹膜炎として緊急手術をした好酸球性胃腸炎の1症例
松本 剛昌, 村嶋 信尚, 藤原 拓造, 伊波 茂道, 飽浦 良和, 浜崎 啓介
倉敷成人病センター外科
緊急手術を施行した後に,好酸球性胃腸炎と診断した1症例を報告する.症例は17歳の男性で,約2週間続いた腹痛のため当院を紹介された.超音波検査にて多量の腹水が認められ,末梢血白血球増多もみられたことより,腹膜炎を疑い開腹手術が施行された.開腹にて2.1lの血性腹水がみられたが,腹腔内の炎症所見は,軽度であった.虫垂切除術のみ施行した.術後に,嘔気・嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状が持続し,末梢血や腹水中に好酸球の増多が確認された.好酸球増多症を伴う他の全身性疾患を否定しえたので本症を疑い,ステロイドのパルス療法を行ったところ,著明な症状の改善を認めた.さらに切除した虫垂やS字状結腸内視鏡下生検標本の組織学的検索にて,高度の好酸球浸潤が証明され,好酸球性胃腸炎と診断した.その後6年間外来通院中であるが,ステロイドの投与中止により症状の再燃がみられる極めてまれな好酸球性胃腸炎の症例と思われた.
索引用語
eosinophilic gastroenteritis, eosinophilic peritonitis, eosinophilia
日消外会誌 30: 1995-1999, 1997
別刷請求先
松本 剛昌 〒710 倉敷市白楽町250 倉敷成人病センター外科
受理年月日
1997年5月21日
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