症例報告
多発性胃重複症の1例
大西 秀哉, 加藤 雅人, 高嶋 雅樹1), 佐伯 修治2), 山崎 徹2), 中垣 充
国家公務員等共済組合連合会浜の町病院外科, 九州大学第2病理1), 同 第1外科2)
胃重複症は先天性の奇形で消化管重複症の1つである.自験例を含め,本邦で74例の報告を見るに過ぎない.今回,2つの嚢腫を有した胃重複症を経験したので報告する.症例は40歳の女性で,1991年12月腹部エコー,CT検査で左横隔膜下,膵背側に嚢胞性腫瘤を指摘された.1992年4月,膵嚢胞の疑いで手術を受けた.左横隔膜下に径8 cm,膵体尾部背側に10 cmの嚢腫が存在し,おのおの別個に胃体上部大彎側との強固な壁の連続を認めた.病理組織学的所見で2つの嚢腫は共に消化管壁に類似した構造を持ち,またその筋層は本来の胃の筋層と連続しており,胃重複症と診断した.胃重複症は無症状で経過し成人で偶然発見されることも多い.診断には胃透視,腹部CT検査,超音波内視鏡が有用であり,また重複胃よりの癌発生の報告もあるため治療は外科的治療が第1選択と考えられる.腹腔内に嚢胞性腫瘤がある場合には胃重複症も念頭に置くことが大切である.
索引用語
gastric duplication, cystic mass
日消外会誌 30: 2000-2003, 1997
別刷請求先
大西 秀哉 〒810 福岡市中央区舞鶴3-5-27 浜の町病院外科
受理年月日
1997年5月21日
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