症例報告
腎細胞癌異時性膵内多発転移に対する膵全摘の1例
津村 裕昭, 児玉 節, 横山 隆*, 竹末 芳生, 村上 義昭, 立本 直邦, 赤木 真治, 松浦 雄一郎
広島大学医学部第1外科, 広島大学医学部附属病院総合診療部*
57歳の男性の極めてまれな腎細胞癌異時性膵多発転移の切除例を経験した.患者は1985年に他院で腎細胞癌にて右腎部分切除術を受けており,経過観察中の1994年10月腹部超音波検査で膵腫瘍を指摘された.Enhanced CTでは境界やや不明瞭な不均一に造影される膵全体の多発腫瘍を認めた.MRIではT1強調像でiso intensity,T2強調像で不均一なhigh intensityを示した.血管造影では動脈相早期より濃染する腫瘍陰影を認め,静脈相では膵内静脈系を介して早期に門脈系が造影された.ERPでは主膵管の多発性の狭窄像,尾側膵管の拡張を認め,brushingによる細胞診にてclass 2,異型細胞はp53に軽度に染色され,内分泌由来の悪性腫瘍は否定された.以上より腎細胞癌異時性膵多発転移の診断のもと膵全摘,D1郭清を行った.本稿では文献的報告例の集計に考察を加えて報告する.
索引用語
renal cell carcinoma, matastatic pancreatic cancer
日消外会誌 30: 2029-2033, 1997
別刷請求先
津村 裕昭 〒734 広島市南区霞1-2-3 広島大学医学部第1外科
受理年月日
1997年5月21日
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