症例報告
炎症性腸疾患に合併した消化管カルチノイドの2例
浜口 洋平, 小尾 芳郎, 和田 浄史, 藤井 義郎, 千葉 泰彦, 山内 毅, 高橋 利通, 林 嘉繁, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
横浜市立市民病院外科
炎症性腸疾患に消化管カルチノイドを合併した2例を報告する.症例1:36歳の女性.主訴:嘔気,嘔吐.1988年10月クローン病(小腸大腸型)の診断で,回盲部切除術を施行した.93年6月十二指腸狭窄を認め,94年8月11日術中迅速病理診断にてカルチノイドと診断し幽門側胃切除術を施行したが,以後肺,骨転移を認め,95年3月4日死亡した.症例2:67歳の女性.主訴:便秘.1990年7月より全大腸炎型潰瘍性大腸炎の診断で投薬治療中,94年1月便秘が出現し,直腸カルチノイドで3月3日直腸前方切除術を施行した.術中所見で肝転移,腹膜播種を認め,4月27日死亡した.炎症性腸疾患に合併した消化管カルチノイドの報告例は,自験例を含めクローン病16例,潰瘍性大腸炎20例あり,両疾患の病変部位は一致する症例が多く,潰瘍性大腸炎では10年以上の長期経過例が大半を占め,カルチノイド発生に炎症性腸疾患が関与している可能性が示唆された.
索引用語
inflammatory bowel disease, gastrointestinal carcinoid
日消外会誌 30: 2039-2043, 1997
別刷請求先
浜口 洋平 〒240 横浜市保土ケ谷区岡沢町56 横浜市立市民病院外科
受理年月日
1997年5月21日
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