特集
多発胃癌に対する胃切除範囲の縮小は可能か?
仁瓶 善郎, 市川 度, 伊藤 雅史, 山下 俊樹, 植竹 宏之, 長内 孝之
東京医科歯科大学第2外科
多発胃癌に対し切除範囲を中心とした縮小手術の可能性に関して検討を行うために,当科および関連施設において切除された100例の多発胃癌症例を解析した.副病巣の診断率は45.4%であり,大きさの小さい病変,平坦型の病変で術前診断が不能なものが多かった.主病巣が早期癌のものではリンパ節転移は1例(1.2%)であった.主病巣が進行癌のものを除く,術前に副病巣の診断可能であった32例について胃局所切除の適応をみると,主病巣では37.5%,副病巣では53.1%でその適応を満たしていた.また,症例としては切除範囲の縮小の適応とならないものが40.6%に認められたが,37.5%は局所切除の対象となり切除範囲の縮小が可能で,胃切除による障害を回避できることが示唆された.多発胃癌についてもその約4割に対し切除範囲を縮小し得る可能性が示唆されたが,十分な説明と了解,同意が必要であり,残された発癌母地に対してのフォローアップが重要である.
索引用語
multiple gastric cancer, gastrectomy, local excision
日消外会誌 30: 2107-2111, 1997
別刷請求先
仁瓶 善郎 〒113 東京都文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学第2外科
受理年月日
1997年6月11日
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