臨床経験
血管内コイルをマーカーとして腹腔鏡補助下に切除しえた空腸動静脈奇形の1例
山本 貴章, 河地 茂行, 川原 英之, 濱谷 昌弘, 櫻井 孝志, 井上 聡, 高山 伸, 原 正
川崎市立井田病院外科
症例は65歳の女性,肝硬変で外来通院中に繰り返すタール便のため入院となり,上下部消化管を精査したが出血源不明のため,腹部血管造影を施行した.空腸動脈末梢に動脈相早期から静脈相後期まで造影される拡張した静脈が確認され,空腸の動静脈奇形と診断した.病巣が小さく局在診断が困難と予想されたため術前に選択的血管造影で病巣近傍の動脈内にマイクロコイルを留置した.手術は腹腔鏡下に開始し,透視下にコイルを確認して血管の支配領域に従って空腸を腹腔外に誘導し約33cm切除した.摘出標本では暗褐色の粘膜が帯状に約5cmにわたり存在し,組織学的には粘膜下層を中心に脈管の拡張が認められた.術後経過は良好で第11病日に退院し,術後1年以上経過した現在まで再出血を認めていない.「マイクロコイル留置後の腹腔鏡下手術」は消化管動静脈奇形の治療法として有力な選択枝のひとつになりえると考えられた.
索引用語
intestinal arteriovenous malformation, marking coil inserted with angiography, laparoscopic surgery with fluoroscopy
日消外会誌 32: 1235-1239, 1999
別刷請求先
山本 貴章 〒211-0035 川崎市中原区井田2-27-1 川崎市立井田病院外科
受理年月日
1999年1月27日
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