症例報告
胆石症を合併し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した肝右葉形成不全症の1例
諸角 強英, 宮崎 洋史, 奈良井 慎, 古川 秋生, 岡本 祐一, 中村 知己
東京都国民健康保険団体連合会福生病院外科
症例は56歳の女性.心窩部痛を主訴として来院した.腹部CTと3D-DICCTを施行したところ肝右葉の低形成と尾状葉の欠損を認めた.肝左葉外側区域は代償性に肥大していた.胆嚢は右横隔膜窩外側,内側区域の背側に位置するsuprahepatic gallbladderで,胆嚢内に結石を認めた.腹腔鏡にても肝右葉の低形成と外側区域の肥大を認めたが,胆嚢の確認は困難であった.強く頭高位・左半側臥位とし,トラカールを5本用いて,腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.肝右葉形成不全症は非常にまれな肝の形態異常で,本邦では1985年以来41例が報告されているにすぎない.本症はしばしば胆嚢の位置異常を合併し,さらに胆道疾患,特に胆石症を合併することが知られている.海外では右横隔膜の欠損や類洞前性の門脈圧亢進症を合併する症例の報告も多い.肝右葉形成不全症に合併した胆嚢結石症に対し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を行ったのはわれわれが世界で初めてと思われる.
索引用語
right liver lobe hypoplasia, laparoscopic cholecystectomy, suprahepatic gallbladder
日消外会誌 33: 1666-1670, 2000
別刷請求先
諸角 強英 〒197-8511 福生市加美平1-6-1 福生病院外科
受理年月日
2000年5月23日
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