症例報告
内視鏡的分割切除後に粘液結節の遺残を認めた直腸sm癌の1例
深原 俊明, 岡部 聡, 田波 秀朗, 桑原 博, 大司 俊郎, 村瀬 尚哉, 山下 博典, 岩井 武尚, 杉原 健一
東京医科歯科大学外科
症例は69歳の男性.便潜血陽性にて近医で大腸内視鏡検査を施行し,直腸に頂部の崩れたIs病変を認めた.平成9年11月10日,EMRを施行されたが分割切除となった.病理所見で粘液結節の形成を伴う粘膜下層への浸潤を認めたため当科を紹介され,平成10年2月2日に直腸前方切除術を施行した.切除標本の病理検査にて,粘膜下層に粘液結節を認めた.sm浸潤の可能性がある大腸癌に対しては,complete biopsyの目的で内視鏡的に一括切除を行うことは治療方針の決定のために有用である.しかし,分割切除では,粘膜下層浸潤の診断を困難にするばかりでなく,転移の危険性を高める可能性があり,高度浸潤を疑うsm癌はEMRの適応ではないと思われた.また,自験例のように粘膜下層の癌先進部付近に粘液結節の形成を認めた場合には,腸壁への癌遺残の可能性が高く所属リンパ節郭清を伴う追加腸切除術を行うべきと考えられた.
索引用語
submucosal invasive carcinoma, endoscopic mucosal resection, mucous nodule
日消外会誌 34: 1359-1362, 2001
別刷請求先
深原 俊明 〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学第1外科
受理年月日
2001年3月28日
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