症例報告
直腸癌からの管腔内転移により発症した痔瘻癌の1例
吉村 久, 家永 徹也, 植田 真三久*, 太田 壮美
高槻病院外科, 六甲病院外科*
症例は59歳の男性.痔瘻の病歴を有し,肛門部の腫瘤を自覚し来院,肛門右側に瘻孔を認め,肛門皮下に5cm大の腫瘍を触知した.CT,MRIにて腫瘍周囲に膿瘍を伴い,瘻孔が描出された.腫瘍の穿刺細胞診はcclass IVであった.大腸精査にて,肛門より10cmの直腸に2/3周にわたる2型の腫瘍を認め,生検にて中分化型腺癌であった.痔瘻癌と直腸癌の重複癌,あるいは直腸癌の痔瘻への管腔内転移を考え手術を施行した.手術は腹会陰式直腸切断術(D2)を痔瘻腫瘍を含めて切除し,右鼡径リンパ節郭清術を行った.肛門部の欠損は有茎の右薄筋皮弁で補填した.切除標本の病理組織所見では,直腸癌は中分化型腺癌で,一方,痔瘻腫瘍は直腸と同一の組織型であった.直腸癌と痔瘻癌は組織学的に連続性は認めず,管腔内播種による転移が示唆された.管腔内転移による痔瘻癌の報告はまれであり検討を加え報告する.
索引用語
implantation, carcinoma of anal fistula
日消外会誌 34: 1363-1366, 2001
別刷請求先
吉村 久 〒569-1192 高槻市古曽部町1-3-13 愛仁会高槻病院外科
受理年月日
2001年4月25日
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